佐賀支部の92期レーサー・山口 高志選手(4222)が、2024年7月9日に唐津競艇場で開催された「一般・西日本スポーツ杯」を最後に、18日付で日本モーターボート競走会に引退届を提出したことが報じられました。
7月19日現在、山口 高志選手の情報は「BOAT RACE公式サイト」内の選手紹介ページからは削除されており、7月18日頃に削除されたと推測できます。
確認したところ、「ボートレースからつOfficial Site」の佐賀支部所属選手一覧ではまだ確認できる状況でありますが、近日中に削除される見込みです。
2003年5月8日に唐津競艇場で92期としてデビューした山口 高志選手。
2024年7月10日に唐津市の市道で酒気を帯びた状態で乗用車を運転し、交差点の信号柱に衝突する事故を起こして、現行犯逮捕されたことが報じられていました。
このことがきっかけとなり、選手としての体面を汚したことから、引退勧告を受けて、もしくは自ら身を引く決断をしたのでしょう。
競艇界では不祥事が多発しており、日本モーターボート競走会も頭が痛い状況が続いている昨今。
山口 高志選手の基本情報・同期の注目選手・師弟関係・近年の成績から引退勧告の水準まで、引退と酒気帯び運転での現行犯逮捕の関連性についても考察していきたいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
山口 高志選手の基本情報
名前 (フリガナ) | 山口 高志 (ヤマグチ タカシ) |
登録番号 | 4222 |
生年月日 | 1981年12月2日 |
身長 | 167cm |
体重 | 52㎏ |
血液型 | A型 |
支部 | 佐賀 |
出身地 | 佐賀県 |
登録期 | 92期 |
級別 | B1級 |
デビュー日 | 2003年5月8日 |
最終出走日 | 2024年7月9日 |
引退日 | 2024年7月18日 |
山口 高志選手は1981年生まれ、佐賀支部所属のB1級ボートレーサーです。
デビュー当時は、プロ野球のオールドファンならわかるであろう、阪急ブレーブスで日本シリーズMVPに輝いた剛速球投手と同姓同名ということで話題になりました。
2001年12月にボートレーサー養成所の一般試験を受験して、見事に合格。
1年間の訓練期間を経て、92期として2003年5月に唐津競艇場の一般戦でデビューを飾りました。
21年間の選手生活での出場節数は501節で、出走数は4,354走、通算51優出で優勝は3回、通算743勝という成績を収めており、生涯獲得金額は3億860万7,401円。
現役生活最後のレースは、2024年7月9日に唐津競艇場で開催された一般戦「一般・西日本スポーツ杯」最終日の第9レースの1着でした。
時期的に…
もしも、直近の勝利を祝した一杯で選手生命を失ったのだとしたら、皮肉な話ですね。
- 【尼崎競艇優勝戦】優勝戦で①今垣光太郎に対し本番3カド③山口高志、結果は如何に?
山口 高志選手の過去戦績
日付 | レース名 | レース場 | グレード | 戦績・概要 |
2003年5月8日 | スポーツ報知杯争奪戦競走 | 唐津 | 一般 | デビュー |
2003年9月23日 | 日本モーターボート選手会会長杯競走 | 唐津 | 一般 | 初勝利 |
2007年9月12日 | 一般競走 | 唐津 | 一般 | 初優出 |
2014年1月14日 | G1 全日本王者決定戦(開設60周年記念) | 唐津 | G1 | G1初出場 |
2014年1月15日 | G1 全日本王者決定戦(開設60周年記念) | 唐津 | G1 | G1初勝利 |
2015年6月1日 | エナジーサポート労組50年賞 | 常滑 | 一般 | 初優勝 |
2017年7月5日 | マクール杯 | 三国 | 一般 | 通算500勝達成 |
2024年7月9日 | 西日本スポーツ杯 | 唐津 | 一般 | ラストレース |
山口 高志選手は、2003年5月8日~12日に佐賀支部のホームプール・唐津競艇場で開催された一般戦「スポーツ報知杯争奪戦競走」で92期としてデビュー。
同年9月に同じ水面でデビューから65走目にして初勝利を手にするなど、新人時代は順調な活躍を見せ、2007年9月には初優出を果たすものの、惜しくも舟券に絡む活躍はできずに4着。
そして、デビューから12年後の2015年6月1日に常滑競艇場で開催された、一般戦「エナジーサポート労組50年賞」で悲願の初優勝を飾ると、2017年7月には通算500勝を達成しています。
G1競争で見ると、2014年1月に唐津競艇場で開催された「全日本王者決定戦(開設60周年記念)」でG1初出走とG1初勝利を達成しました。
引退までG2競走以上のタイトルは獲得できておらず、SG競争への出場歴もありません。
2012年前期に初めてA級に昇級すると、はじめこそB1級とA2級を行き来する時期もありましたが、2013年後期から2019年後期まではほぼA級を維持しており、実に選手生活21年のうちの6年間、A級を維持するという素晴らしい成績でした。
2014年後期には優出4回という好戦績を積み上げて、自己最高勝率6.50を記録しており、まだまだ現役選手として活躍できる実力を有していました。
同期(92期)の注目選手
山口 高志選手の同期である「92期」にはどのような選手がいるのでしょうか。
主だった選手を以下にまとめました。
SGタイトルホルダーの土屋 智則選手(4362・97期)の姉である「土屋 千明選手」をはじめ、長年A級で活躍し続ける吉川 昭男選手(3582・70期)を兄にもつ「吉川 喜継選手」など、兄弟そろって有名レーサーという選手がいることも「92期」の特徴です。
登録番号 | 名前 | 支部 | 級別 |
4238 | 毒島 誠 | 群馬 | A1 |
4236 | 松村 敏 | 福岡 | A1 |
4237 | 大峯 豊 | 山口 | A1 |
4218 | 吉川 喜継 | 滋賀 | A1 |
4240 | 今井 裕梨 | 群馬 | A2 |
4243 | 西村 歩 | 大阪 | A2 |
4225 | 土屋 千明 | 群馬 | B1 |
- 毒島 誠選手(4238)/1984年1月8日生まれ/群馬/A1
- 松村 敏選手(4236)/1983年9月17日生まれ/福岡/A1
- 大峯 豊選手(4237)/1983年10月14日生まれ/山口/A1
- 吉川 喜継選手(4218)/1981年8月24日生まれ/滋賀/A1
→吉川 昭男選手(3582・70期)の弟
- 今井 裕梨選手(4240)/1984年2月28日生まれ/群馬/A2
- 西村 歩選手(4243)/1985年12月20日生まれ/大阪/A2
- 土屋 千明選手(4225)/1982年6月29日生まれ/群馬/B1
→土屋 智則選手(4362・97期)の姉
「92期」の“出世頭”は毒島 誠選手!
毒島 誠選手は、地元がナイター開催の桐生競艇場ということもあってナイター競走を得意としているため、SG優勝歴8回のうち6回がナイターという実績を誇っており、「神速のナイターキング」の異名を持つトップレーサーです。
名前 (フリガナ) | 毒島 誠 (ブスジマ マコト) |
登録番号 | 4238 |
生年月日 | 1984年1月8日 |
身長 | 162cm |
体重 | 53㎏ |
血液型 | B型 |
支部 | 群馬 |
出身地 | 群馬県 |
登録期 | 92期 |
級別 | A1級 |
代名詞である「スーパーピット離れ」によるインコース奪取や、全国でもトップクラスのターンスピードによる全速ツケマイを武器にSG戦線でも活躍を続けています。
また、自然災害の被災地への支援を積極的に行っており、獲得賞金の一部を日本財団へ継続的に寄付し続けた功績が認められ、2020年5月にはボートレース界史上2人目の紺綬褒章を受章した経歴の持ち主です。
自身のルーティーンとしてレース前に柏手を3回と水面に一礼。ゲン担ぎとして左足から靴下を履く事を決めているという信心深い一面も持ち合わせています。
自身のルーティーンとしてレース前に柏手を3回と水面に一礼。ゲン担ぎとして左足から靴下を履く事を決めているという信心深い一面も持ち合わせています。
毒島 誠選手の過去戦績
毒島 誠選手は、2003年5月9日に地元・桐生競艇場の一般戦で新人ながら3着という好成績でデビューを飾り、同年7月20日に多摩川競艇場でデビューから25走目にして初勝利を手にしました。
また直近では、2024年3月10日に桐生競艇場で開催された「第56回 サンケイスポーツ杯」で通算4回目のパーフェクト優勝を達成して、2021年11月9日の三国競艇場で開催された「G1・開設68周年記念 G1北陸艇王決戦」以来3年ぶりの達成で、1997年以降の完全優勝回数ランキング8位にランクインしています。
さらに、2024年5月12日には史上522人目となる通算1,500勝を達成するとともに、全国24場制覇のリーチレーサーにも名を連ねており、残す競艇場は江戸川競艇場のみ。
現在までの主要獲得タイトルは以下のとおりです。
2024年3月にボートレースクラシックを制覇したことで、瓜生 正義選手・石野 貴之選手・池田 浩二選手・今垣 光太郎選手に次ぐ、現役SG優勝回数5位を誇る毒島 誠選手。
2024年7月20日現在、通算優勝数は79回(うちSG優勝数8回、PG1・G1優勝回数は16回)で、今後もこの記録は更新されていくでしょう。
山口 高志選手の引退理由は?
現在まで、山口 高志選手の引退理由は明言されていません。
しかし、引退が報じられる前の7月12日頃。
「BOAT RACE公式サイト」内の選手紹介ページに掲載されていた7月16日以降の斡旋が全て削除されたことが判明しました。
削除された斡旋は次の2件です。
- 2024年7月16日~20日開催:yab山口朝日放送杯争奪戦(徳山競艇場)
- 2024年7月29日~8月2日開催:近畿・関東・九州支部集結!モーニングバトル(三国競艇場)
ここからは、上記の2件の斡旋が削除された理由と山口 高志選手の引退理由について考察していきたいと思います。
【引退理由の可能性ナンバー1】山口 高志選手が起こした不祥事
引退と斡旋削除の直接的な原因となったと推測できる事件がありますので、ご紹介します。
山口 高志選手が引退届を提出したとされる2024年7月18日。
そこから遡ること8日前、2024年7月10日のことです。
佐賀新聞をはじめとする多くのメディアに「酒気帯び運転疑いで唐津市の競艇選手を現行犯逮捕」という衝撃的な見出しが掲げられました。
『道路交通法違反(酒気帯び運転)での現行犯逮捕』
この言葉と命の重みをしっかりと理解できる大人であれば、自身と人々の命を脅かす悪質な犯罪を犯すことはなかったと思います。
『飲んだら飲むな、乗るなら飲むな』は今や小学生の子供でも理解できる常識中の常識でしょう。
次のグラフは、警視庁が発表した2013年~2023年までの「飲酒運転による交通事故件数の推移」と「飲酒死亡・重傷事故件数の推移」です。
飲酒運転による痛ましい事故(死亡事故・重傷事故)は2023年度だけでも2,346件で、うち死亡事故が112件・重傷事故は323件発生していることがわかります。
2022年度と2023年度を比較すると、飲酒運転を原因とした事故はコロナ渦を抜けたことでやや増加しており、世の中に飲酒運転が蔓延している状態であると言っても過言ではありません。
警視庁公認 交通安全情報サイト TOKYO SAFETY ACTION
引用元:数字で見るTOKYO SAFETY ACTION【飲酒運転編】 | 交通安全だより | 警視庁公認 交通安全情報サイト TOKYO SAFETY ACTION
そのような状況において、“道路交通法違反(酒気帯び運転)での現行犯逮捕”という不祥事を起こしてしまった山口 高志選手。
「選手個人がしっかりと公人である自覚を持つことの重要性」を指摘されるとともに、組織の健全運営が求められている昨今。
近年の度重なる不祥事に頭を痛めている日本モーターボート競走会にとって、現役選手がこのような違法行為に手を染めたという事実は常識を逸脱しており、モラルも正義感もない行為にボートレースファンからも厳しい批判の声が上がることは必至。
一連の報道は負傷者を出さずに済んだものの、倫理の観点からも断じて許しがたい報道であり、山口 高志選手の進退にも関わる非常に厳しい処分を下す必要があったことは想像に容易いでしょう。
- ボートレース界の度重なる不祥事についてはこちらをご覧ください。
道路交通法違反(酒気帯び運転)での現行犯逮捕の詳細
2024年7月10日、佐賀新聞をはじめとする多くのメディアに「酒気帯び運転疑い、唐津市の競艇選手を現行犯逮捕」という衝撃的な見出しが躍りました。
この記事で現行犯逮捕された競艇選手こそが山口 高志選手なのです。
他の記事によれば「“車が電柱にぶつかっている”と通行人から110番通報があった」ことから発覚したようなので、よっぽど泥酔していたのか、それとも自分のしてしまったことに混乱や後悔をしていたのかだと思います。
実際に佐賀新聞に掲載された記事(原文のまま)をご紹介します。
酒気帯び運転疑い、唐津市の競艇選手を現行犯逮捕
7/10(水) 15:51
配信唐津署は10日、道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで、競艇選手の山口高志容疑者(42)=唐津市菜畑=を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は同日午前11時ごろ、唐津市二タ子の市道で酒気を帯びた状態で乗用車を運転した疑い。
同署によると、「弁解することはない」と容疑を認めているという。
同署によると、乗用車が交差点の信号柱に衝突する事故があり、現場にいた山口容疑者から呼気1リットル当たり0.35ミリグラムのアルコールが検出された。
引用元:酒気帯び運転疑い、唐津市の競艇選手を現行犯逮捕 唐津署(佐賀新聞) – Yahoo!ニュース
この記事を見るに、ボートレーサーは公人とされるため、芸能人と同様に「飲酒運転=選手としての体面汚し」と捉えられても致し方ありません。
そもそも飲酒運転自体が違法行為ですから、処罰されて当然。
言うまでもありませんが、“処罰は一般人でも、ボートレーサーでも、有名人でも、政治家でも例外なく科される”のです。
一般人でも役職者などは会社等で職を解かれたり、辞する処分を下されることがあるでしょう。
公人であり、社会に影響を与えるボートレーサーが行ったとあれば尚更です。
法律を犯して、危険な行為をしたのですから、罪の重さは関係ありません。
今回は幸いにして、死傷者が出なかったものの、現に交差点の信号柱に衝突しており、一歩間違えば大きな事故となって人命を奪っていてもおかしくはありません。
この報道を鑑みて、褒賞懲戒審議会が山口 高志選手に対して「選手としての体面汚し」を理由に引退勧告を行った、もしくは自ら責任を取るための決断だったものと推測できます。
その結果として、山口 高志選手は引退というかたちで、自ら身を引く決断をしたのでしょう。
褒賞懲戒審議会とは?
競艇選手に出場停止処分を下すことを決める“褒賞懲戒審議会”とはどのようなものなのでしょうか?
日刊スポーツの記事に概要が記されていましたので、ご紹介します。
褒賞懲戒審議会とは、日本モーターボート競走会が選手・審判員及び検査員の褒賞及び懲戒について審議する会。
引用元:最強ボートレーサー峰竜太が褒賞懲戒審議会で4カ月出場停止 SGは来年8月メモリアルまで不可 – ボート : 日刊スポーツ (nikkansports.com)
競走会に審議会を設置し、10人以内の委員で組織される。
選手の懲戒については、それぞれの事案に対して戒告か、一定期間の出場停止処分を課すことができる。
飲酒運転の処罰
ここからは、飲酒運転で検挙されるとどのような処罰を受けるのかをまとめました。
運転者のみならず、同乗者や酒類を提供した者も処罰の対象となります。
- 飲酒運転者の罰則
酒酔い運転 | 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
---|---|
酒気帯び運転 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
- 飲酒運転者の違反点数
違反種別 | 酒酔い運転 | 35点 |
---|---|---|
(呼気1リットル中のアルコール濃度0.25ミリグラム以上) | 酒気帯び運転25点 | |
(呼気1リットル中のアルコール濃度0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満) | 酒気帯び運転13点 |
- 車両提供者の処罰
運転者が酒酔い運転 | 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
---|---|
運転者が酒気帯び運転 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
- 酒類の提供・車両の同乗者の処罰
運転者が酒酔い運転 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
---|---|
運転者が酒気帯び運転 | 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
2024年7月19日、引退が報じられた後に確認した選手紹介ページ
2024年7月19日までに「BOAT RACE公式サイト」内のプロフィールページが削除されたことが確認できました。
現在、山口 高志選手のプロフィールページにアクセスすると『※ データが存在しないのでページを表示できません。』と表示されて、以前のように情報を閲覧できない状態となっています。
また、同サイト内の検索機能を利用して“選手名”や“登録番号”で検索しても、すでに情報を見ることはできなくなっていました。
2024年7月19日現在、確認できるボートレース唐津公式サイトの佐賀支部選手一覧
山口 高志選手の情報は「BOAT RACE公式サイト」内から削除されましたが、2024年7月19日現在も「ボートレースからつOfficial Site」では確認することが可能です。
しかし、引退届が受理されて選手登録が削除された以上、佐賀支部所属選手一覧からも近日中に削除されるでしょう。
【引退理由の可能性アリ?】成績不振による引退勧告の可能性
繰り返しますが、山口 高志選手の引退理由は明言されていません。
しかし、明らかに引退理由と考えても矛盾しない要因(=飲酒運転での逮捕)があることと、引退届を提出した時期を考えれば、今回の山口 高志選手の引退理由として「成績不振による引退勧告」は該当しないものと考えられます。
もし、実際に成績不振が引退の背景にあるとすれば、この時期ではなく、5月あるいは6月に引退届を提出する可能性が高いですし、飲酒運転との関連を疑うまでもないでしょう。
それでも、これまで艇界を去った選手の多くは「4期通算の成績不振による引退勧告」か「年齢的な理由で自ら身を引く」ことがほとんどでした。
では、山口 高志選手の場合は“成績不振による引退”を考えるような成績だったのでしょうか?
まずは成績不振による引退勧告の基準についてご紹介します。
山口 高志選手の直接の引退理由を“今回の不祥事(=飲酒運転での逮捕)”であると仮定したうえで、近年の成績を見ていきましょう。
成績不振による引退勧告の基準
まずはじめに、引退勧告とは「日本モーターボート協会が競艇選手に引退を勧告すること」とされています。
あくまで勧告であり、引退を強制するものではありませんが、定められている条件がボートレーサーにっては選手生命を続けていくうえで致命的なものであるため、勧告を受けて引退をするケースが多いのが現状です。
毎年5月と11月に新人がデビューすることに伴い、成績が振るわない選手にとっては4月と10月は厳しい勝負時とされます。
なぜなら、成績下位の選手が退会勧告を受けて引退をするため、4期通算勝率が3.80未満のレーサーが候補となるからです。
※選手登録3年経過していない選手は対象外。
引退勧告の基準は次のとおりとなっています。
判断項目 | 基準 |
---|---|
4期通算勝率 | 3.8未満 |
4期通算事故率 | 0.7以上 |
4期通算出走数 | 60回未満 ※自己都合により60回を下回る場合 |
ただし、以下の条件に該当する選手については対象外、もしくは特例措置を講じられます。
- 選手登録3年以内の選手は対象外
- 1期の出走回数が50走未満の場合、次の期と合計した2期分でカウント
- 産休は出産のあった期と前後いずれかの期の合計2期を除外
ちなみに、4期通算といっても1期(半年)が49走以内ならばカウントせず、50走以上になった次の期と合わせて計算するという特例もあります。
そのため、勝率や事故点が厳しい選手は出走回数を調整して「49走止め」を行うこともあり、全く勝てなくてもデビューから7年間は選手を続けることが可能となっているのです。
※“登録から3年の猶予”と“50走未満を維持して4年”の合計が7年であり、産休などを挟む場合は更に延長されます。
競艇は1年を前期と後期にわけた2期制を採用しており、実施期間を前期は1月1日~6月30日、後期を7月1日~12月31日までとしています。
そのため、4期通算=2年通算となり、2年間の勝率・事故率・出走数を考慮して判断されることとなります。
※審査期間の前期:5月1日~10月31日と後期:11月1日~翌年4月30日までとは異なるため注意が必要。
〖結論〗考えられる引退の理由は?
前述の基準と山口 高志選手の勝率・事故率・出走回数を見比べると、引退勧告を受ける対象ではなかったと考えられます。
その理由は以下のとおりです。
- 4期通算勝率:デビュー以来ずっと3.80を上回っており、4期通算すると勝率4.73で基準以上
- 4期通算事故率:事故率0.7以下(2024年2月4日にコンマ01のフライング歴あり)
- 4期通算出走回数:4期連続で出走数が60回以上
上記の“成績不振による引退勧告基準”には1つも当てはまらないため、引退勧告を受けるような状況ではなかったはずです。
そのため、考えられる引退理由としては「引退勧告を受けて、もしくは今回の不祥事の責任を取るかたちで、自ら退く決断をした」ということでしょう。
そのような決断に至った経緯として、考えられるデータをご紹介します。
年 | 期 | 級別 | 出走数 | 勝率 |
---|---|---|---|---|
2020年 | 前期 | B1 | 97走 | 5.21 |
後期 | B1 | 118走 | 5.32 | |
2021年 | 前期 | A2 | 108走 | 5.68 |
後期 | B1 | 122走 | 4.91 | |
2022年 | 前期 | B1 | 88走 | 5.28 |
後期 | B1 | 56走 | 4.46 | |
2023年 | 前期 | B1 | 93走 | 4.42 |
後期 | B1 | 86走 | 4.38 | |
2024年 | 前期 | B1 | 111走 | 5.30 |
後期 | B1 | 72走 | 4.81 |
上記の表から鑑みるに、引退理由に「4期通算の成績不振による引退勧告」が関係していないことは明白です。
直近5年だけで見ても、2020年に平均100以上あった出走数は少しづつ減少しているものの、2024年でも平均90以上を維持しています。
勝率は2022年前期の5.28から徐々に低下していましたが、2024年前期には5.30に持ち直し、全期間を通して3.80を超えていることが読み取れます。
結論として、『成績不振での引退勧告を受けるような立場ではなく、道路交通法違反(酒気帯び運転)での現行犯逮捕の責任を取って引退を決めた』というところでしょう。
SNSの反応は?
軽率な判断で、飲酒運転という恥ずべき違法行為をしてしまった山口 高志選手。
その引退を受けて、SNSにはどのような声があがったのでしょうか?
その一部を抜粋してご紹介します。
やはり飲酒運転という違反行為に及んでしまったことで、飲酒運転に対する憤りとも取れる声や「競艇界の面汚し」「(引退は)仕方ない」「何してるんだ」という辛辣な声が目立ちました。
厳しい言い方かもしれませんが、厳しい声が見られるのは当然でしょう。
しかし、一方で「すごく残念」「もったいない選手がやめてしまいました」という声が投稿されていたことから、山口 高志選手がファンから愛されていた証を見た気がします。
このような引退理由では残念としか言いようがありませんし、擁護もしようがありませんが、山口 高志選手が残してきた成績や掴んできたファンの心に嘘はありません。
それだけは今後も変わらない事実です。
酒気帯び運転の疑いで逮捕された旨を知らせる投稿
酒気帯び運転の疑いで逮捕されたことに対する反応
現役引退を受けての投稿
最も印象的に残ったのは、「自主引退させてもらえて最善だと思ってほしい」という意見があると同時に「これまで不祥事でも謹慎して選手続けた例もある中でこれは(業界的には)厳しい責任の取り方」という声があがったことでした。
きっと“謹慎して選手続けた例”というのは、2022年に不祥事を起こした峰 竜太選手の件を引き合いに出しているのでしょう。
峰 竜太選手が犯した不祥事については、下記の記事で触れていますので、ぜひご一読ください。
日本モーターボート競走会の規定がどのようになっているのかわかりませんが、処分に差が出て、ファンに不信感を与えてしまうのは如何なものかと思いますよね…
隠蔽体質と揶揄される日本モーターボート競走会の運営体制。
そのような良くないイメージが“不信感”につながっていることを理解してもらったうえで、今一度の規定・罰則の見直し、そして何よりファンに対する情報開示が必要なのではないかと思いました。
ちなみに、今回の山口 高志選手の件に類似した案件がありましたのでご紹介します。
2012年10月15日に同じような状況で現行犯逮捕された元ボートレーサー・田中 孝征さん(4576・105期)の飲酒運転と現行犯逮捕の報道です。
田中 孝征元選手はこの飲酒事故以降、1度もレースに出場せずに日本モーターボート競走会へ引退届を提出しました。
状況・飲酒事故から引退までの期間を比較してみても、山口 高志選手の件と酷似しているように感じます。
元ボートレーサー・田中 孝征選手の飲酒運転と現行犯逮捕に係る記事
福岡 競艇選手を飲酒運転で逮捕「ビールやハイボールを飲んだ」
2012年10月15日19時55分
競艇選手を飲酒運転で逮捕福岡県警柳川署は15日、酒に酔った状態で車を運転したとして道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで、ボートレーサー(競艇選手)田中孝征容疑者(23=柳川市大和町)を
現行犯逮捕した。逮捕容疑は、15日午前3時45分ごろ、同市三橋町今古賀の国道で、酒に酔った状態で車を運転した疑い。
呼気から基準値の約5倍のアルコールが検出された。
同署によると、県警交通機動隊の隊員が無灯火で走行する田中容疑者の車を発見し、職務質問で発覚した。
容疑を認め「ビールやハイボールを飲んだ」と話しているという。
引用元:共同新聞社
酒気帯び運転:容疑で競艇選手を逮捕??柳川署 /福岡
毎日新聞 2012年10月16日 地方版
柳川署は15日、柳川市大和町栄、競艇選手、田中孝征(こうせい)容疑者(23)を道交法違反(酒気帯び運転)容疑で現行犯逮捕した。
逮捕容疑は同日午前3時45分ごろ、同市三橋町今古賀の国道208号で乗用車を酒気を帯びた状態で運転したとしている。
同署によると、ヘッドライトを点灯せずに運転しており、飲酒検知では基準の5倍を超える呼気1リットル当たりアルコール0.81ミリグラムを検出した。
田中容疑者は2009年11月にプロデビューした。
引用元:毎日新聞(筑後版)
まとめ
山口 高志選手、デビューから約21年もの長きにわたってのご活躍、本当にお疲れさまでした。
近年では輝かしい活躍とまではいきませんでしたが、引退勧告の対象とは程遠い成績を残しながらも、自らの軽率な行いが原因で選手生命を絶つに至ったことが残念でなりません。
SNSに投稿された「もったいない選手がやめてしまいました」という言葉がファンの本心をよく表しているでしょう。
“飲酒運転が犯してはならない自分勝手な違法行為”であることは言うまでもありませんが、ボートレーサーとして以前に“人”として、自分の罪と真摯に向き合うことで、二度と同じ過ちは繰り返さないでほしいと切に願います。
まだ40代になったばかりの山口 高志選手。
新たに歩み始める第二の人生が健康で幸多きものとなりますよう、心よりお祈りいたしております。
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