日常生活に非常に馴染みのある乗り物といえば自転車。
そんな自転車を使用して競輪のレースは行われますが、
競輪用自転車の値段ってどのくらいか知っていますか?
街で見かけるママチャリは安いものであれば1万円。
ロードバイクなら10万円くらいあればとりあえず買えますね。
ご想像の通り、プロが乗る競輪用の自転車はそんなものじゃありません。
ということで今回は競輪用自転車の値段について解説していきます!
この記事を読むと…
- 競輪用自転車の値段がわかる
- 競輪用自転車の基礎知識がわかる
- オリンピックで使われる自転車がいくらなのかわかる
競輪用自転車の値段はいくら?
競輪で使用される自転車は「速く」そして「力強く」走るために作られた特別な自転車。
選手の能力や体型に合わせて細かな調整やチューニングが出来るようになっています。
そんな競輪用自転車の値段はだいたい40万円以上です。
40万円というと超庶民のわたくしは「めちゃくちゃ高いやんけ」ってのが正直な感想なんですが、
調べてみると、そりゃ高くもなりますわなって納得しちゃいました。
これを読んでもらえればなぜ競輪用自転車が高額になるのかわかっていただけると思います。
速さと力強さを追求した科学と英知の集合体である競輪用自転車の秘密に迫りましょう!
競輪用自転車は完全オーダーメイド
まず大前提のお話ですが、競輪用の自転車は完全オーダーメイドで作られます。
理由はそれぞれの選手の体型や能力に合うように全てのパーツが綿密にチューニングされているからです。
競輪用自転車のパーツは様々なものがあります。
- フレーム
- ハンドル
- サドル
- クランク
- ペダル
- チェーン
- ギア
- タイヤ etc
ざっと挙げただけでもこれだけ出てきます。
こういったパーツのひとつひとつが自転車に乗る選手の体型や体格、脚の長さ、好みなどに合わせて、
パーツの材質や重さや幅などがそれぞれカスタマイズされます。
自転車ではありますが選手にとってはもはや体の一部と言っても過言ではない程でしょう。
随所に選手の体と一体になってバンクを走る工夫がなされているというわけです。
競輪用自転車の重量
競輪用自転車ってめっちゃ軽いんです。
なんと約7~8キロ。
ママチャリがだいたい15~20キロくらいなので一般的な自転車の半分くらいですね。
速さを追い求めるために不要なパーツの一切を外し超軽量素材を使用することで実現する重量です。
自転車で一番重い部分は「フレーム」なのですが、これには既製品がありません。
フレームの素材についてもNJS認定(競技用自転車)という日本の競輪で使用できる規格を通過したパーツであれば指定は無し。
そのためフレームは競輪選手のオーダーに合わせて、
フレームビルダーという職人さんによってひとつひとつ制作されます。
つまり競輪用自転車のフレームは世界にひとつだけ、同じものは存在しません。
フレームの素材には耐久性が高く適度な「しなり」があり自転車のフレームに適しているといわれる、
クロムモリブデン鋼が使用されています。
このフレームを「クロモリフレーム」と呼びます。
クロムモリブデン鋼は他にも火力発電所で使用される耐熱容器にも使われているみたいですね。
なぜ耐久性が必要なのかと言えば、競輪は時速70キロを超える速度を出すからです。
自転車には相当な負荷がかかりますのでそれに耐えられるだけの素材が必要になるというわけですね。
ちなみにフレームの値段は安いものでも10万円前後、高いものだとフレームだけで30万円以上することもあります。
競輪用自転車のハンドル
競輪用自転車のハンドルって特殊な形をしていますよね。
その理由は、スピードを出すために前傾姿勢になって自転車を漕ぐためです。
前傾姿勢にあわせてハンドル部分も弧を描いているわけですね。
競輪のバンクはゆるやかなカーブになっているので、
選手は大きくハンドルを切ってカーブをすることはありません。
カーブはほんの少しのハンドル操作と体重移動で行っています。
その時に重要になるのが前に進むための重心位置です。
この重心位置を調整するためにハンドルの角度をそれにあわせて調整します。
選手の脚質などから好みの角度(これをしゃくりって呼んだりします)に変えて調整を行っていきます。
ハンドルも選手にあわせたオンリーワンのものなので当然値段も高くなるというわけですね。
競輪用自転車のタイヤ
競輪用自転車のタイヤは一般的な自転車と比べるとかなり細いですよね。
その理由は勿論、速く走るためです。
タイヤが細いと地面との接地面と摩擦が少なくなるため速く走れるというわけです。
競輪用自転車のタイヤはサイズが決まっております。
- 外径675mm
- 太さ22mm
ちなみにタイヤチューブも選手自身が交換してレースに臨みます。
競輪用自転車のペダル
ペダルに足をかけてグッと踏み込んで自転車を漕ぐ。
これは一般的な自転車でも競輪用自転車でも変わらないのですが、
ペダルの構造に大きな違いがあります。
まず競輪選手はレーサーシューズと呼ばれる靴を履いて自転車に乗ります。
レーサーシューズには桟(サン)という小さな出っ張りがあって、
ペダルには桟を固定する穴が作られています。
この桟には選手が全力で漕いだその力をペダルに伝える役割があるということですね。
桟とペダルのかみ合わせがもし悪かったとすれば、
ペダルから脚が外れ大きく減速するか、最悪の場合は事故に繋がります。
そのため桟やペダルの位置調整が重要になってきます。
その選手にあった桟の位置やペダルを踏みこむ場所があるのですね。
ちなみにペダルはNJS認定モデルで15,000円前後くらいで売られているようです。
競輪用自転車のギア
坂道では軽くして速く走りたければ重くして~でお馴染みのギア。
一般的な自転車と競輪用自転車ではその機能が大きく異なります。
競輪用自転車のギアは、
- 大ギア(ペダル横にある大きいギア)
- 小ギア(後輪軸のそばにある小さいギア)
この2つであり、一般的な自転車のように変速することができません。
そのため選手はギア比率という、ペダルを踏んで一周まわすと後輪が何回転するのかを把握する必要があります。
ギア比率は大ギアの歯の数を小ギアの歯の数で割った数値です。
ということでここでも選手の体型等にあわせてギアが作成される、だから高額になるというわけですね。
競輪で使う自転車はどんな自転車?
競輪用自転車が高額になる理由は選手ひとりひとりに最適な形である完全オーダーメイドで作られるから。
選手の体型や好み等を考慮して材質やチューニングを調整するのは一筋縄ではいきません。
値段については解説できましたが、他にも競輪用自転車には覚えておきたい特徴があるので解説します。
基礎的なことですが重要な知識ですので是非よんでみてください!
競輪用自転車はレーサーと呼ばれる
競輪のレースで使用される自転車は「レーサー」と呼ばれます。
競輪公式サイトでのレーサーを表現する言葉があまりに素晴らしかったのでご紹介します。
とにかく速く、力強く。選手と一体化し走るためだけに生まれたマシーン。
出典:はじめてでもよーくわかるKEIRIN GUIDE
めちゃくちゃくかっこよくないですか!?
それだけのために誕生し生き続ける姿はシンプルがゆえにどこまでも美しい。
私はレーサーにそういった魅力を感じました。
競輪用自転車にブレーキは無い
競輪用自転車にはなんとブレーキがついていません。
一般的な自転車との最大の違いはここにあるのではないでしょうか。
競輪は時速70キロの速さで駆け回るわけですが、そんな中でどうやって止まるのか。
そう、選手が漕ぐ力を抑えて停止させるんです。
ブレーキが無い最大の理由は「速さの追求」のため。
「スピードを出すために必要のないもの」を極限まで排除した結果、ブレーキはいらないという結論に至ったということですね。
また、競輪は車体同士が非常に速い速度で接近しながら争われる競技なので、
急激な減速による接触や落車事故を防止する意図もあります。
競輪用自転車は公道を走れない
競輪用自転車で公道を走ることは出来ません。
まぁわざわざ競輪用自転車を買って公道で乗り回す人なんていないとは思いますが念のため。
ブレーキ装置を備えない、ほかにも前輪又は後輪のみにブレーキ装置を備える自転車で公道を走行すると、
- 道路交通法(同法第63条の9第1項、同法施行規則第9条の3)違反
となり5万円以下の罰金となります。
そもそも人や車が多く行き交う公道ではブレーキをかける頻度が高いので、
ブレーキがついていない自転車は超不向きなんですね。
でもママチャリは格好悪いし…って人向けにブレーキがついている競技用自転車が販売されているのですが、
わざわざブレーキを取り外して乗っている人がここ数年問題になっています。
バッチリ警察に捕まりますし、めちゃくちゃ危険で自分のためにも他人のためにもなりませんし絶対にやめましょう!
ちなみに競輪用自転車で公道を走ろうとするとタイヤがマジで細いせいでパンクすると考えられます。
競輪用自転車の主なパーツの値段を調べてみた
競輪用自転車はだいたい40万円って言われているけど…本当かそれ?
ってことで主なパーツの値段を調べてみました!
方法はヤフオクでひとつひとつのパーツの平均価格を調べてみました。
本物の競輪選手みたいに世界でひとつのオーダーメイドだともっと高額になると思いますが、
ひとつの指標としてお楽しみください!
調べてみた結果は以下の通りです。
パーツ名 | 平均価格(円) |
ハンドル | 2,942 |
ニギリ(グリップ) | 1,230 |
ステム | 9,965 |
タイヤ | 17,562(前後輪合算) |
リム | 31,566(前後輪合算) |
スポーク・ニップル | 26,022(前後輪合算) |
ハブ | 25,100(前後輪合算) |
サドル | 6,951 |
ポスト | 6,724 |
ペダル | 6,513 |
クリップバンド | 1,100 |
トークリップ | 1,660 |
クランク | 18,803 |
大ギヤ | 12,000 |
小ギヤ | 4,332 |
チェーン | 4,145 |
チェーン引き | 913 |
フレーム | 150,000 |
BBセット | 27,883 |
総額は…355,411円という結果になりました!
パーツだけ、しかもヤフオクで揃えたとしてもこれだけの値段になります。
競輪の選手が実際のレースで使用するとなると完全オーダーメイドになりますので、
確実にこの値段よりは高くなりそうですね。
ちなみにこれは競輪用自転車だけの価格です。
当然ながら他にも競輪に必要な用具はあります。
- ヘルメット
- サングラス
- 手袋
- レーサーシューズ
- レーサーパンツ
- アンダーウェア
- プロテクター
以上の用具を揃える必要があります。
ざっと見積もってもこれらの用具だけで10万円以上かかると思われます。
他にも維持費やアクシデントの時の修理費用等々も考えられますので、
競輪をやるのにも相当な経費がかかるのは間違いなさそうですね。
競輪で使用できる大手自転車メーカー
競輪用自転車を作っている会社は多数あります。
そのほとんどが中小企業や個人経営といった規模が小さめの会社や工房です。
しかし2社だけ世界的に有名な大企業あります。
- ブリヂストン
- パナソニック
正確に言うと「ブリヂストンサイクル株式会社」と「パナソニックサイクルテック株式会社」です。
ブリヂストンサイクル株式会社
ブリヂストンといえばタイヤや自動車で使う一般用品のイメージが強いと思います。
しかし実はブリヂストンはもともと自転車競技に力を入れており、
1964年の時点で既に自転車競技部門が設立されておりました。
1999年にはブリヂストンのレーシングチームは改称を行い「ブリヂストン・アンカー」となりました。
その関係で「ブリヂストン」や「アンカー」といったブランド名で競輪用フレームの製造を行っています。
自動車製品は既製品として販売している製品もありますが、
自転車は既製品ではなく、選手にあわせたオーダーメイドでの製品を作成しています。
パナソニックサイクルテック株式会社
パナソニックといえば家電製品のイメージが強いと思いますが、
パナソニックグループの自転車部門としてパナソニックサイクルテック株式会社があります。
なぜ自転車かと言うと、
グループの創業者である松下幸之助さんが幼少の頃に自転車店で奉公をしたご経験があり、
自転車に思い入れがあったことから自転車の本体やライト、タイヤの領域に進出していたからです。
競輪用自転車のメーカーとしてはフレームメーカーの老舗として知られています。
ロードレーサーチームにもスポンサーとしてフレームを提供を行っています。
世界的に有名なプロロードレースである「ツール・ド・フランス」に出場する強豪チームのスポンサーでもあります。
ここからは余談ですが、私が松下幸之助さんを尊敬しておりまして、
ちょっとだけ自転車にまつわるエピソードをご紹介します。
松下幸之助さんが奉公したのは「五代自転車商会」という自転車店でした。
当時(1900年代初頭)の自転車というのは、国産のものは少なくほとんどがアメリカ製かイギリス製。
値段も今でいう自動車くらいしたため、非常に高価でおいそれと売れるものではなかったのです。
そんなある日、番頭さんがたまたま不在にしていた時に「自転車を見せてほしい」との電話が入り、
当時13歳だった松下幸之助さんが自転車を売りにいくことになりました。
必死に自転車を売り込んだ結果、「買ってやるから1割引いておけ」といわれ松下幸之助さんはそれを了承します。
意気揚々と店に帰り、1割引きで売れた旨を報告しますが店の主人に、
「最初から1割引いてどうする。5分だけ引くと伝えなさい。」と言われます。
しかし松下幸之助さんはどうしてもそれを先方に伝えに行くのが嫌で泣きながら1割引きで売ることを懇願。
すると、その様子を聞いた先方が「5分引きで買う。お前が五代にいる限り、自転車は五代から買おう。」と言ってくれたのです。
後に松下幸之助さんは、
商売は価格よりも相手の心を打つ誠意が大切であることを学んだ、生涯忘れられない思い出である。
このように振り返っています。
だから自転車への思い入れが強かったのかもしれませんね。
【番外編】東京オリンピックで採用された自転車の値段
競輪用自転車もかなりの高額でしたが、オリンピックの自転車競技で日本代表が乗った自転車はそれを軽々と上回ります。
価格はなんと530万円。
半端じゃありませんね、1台で530万円です。
制作したのはブリヂストンとブリヂストンサイクル。
それまではフランス製の機材が使われていました。
日本の技術が結集した「国産車」がそれを上回る結果を残して、日本代表使用機材に採用されたのは胸が熱くなりますね。
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