オーシャンカップで整備に追加規定…シリンダーケース交換禁止で“セット交換”が消滅!グランドチャンピオンで相次いだ理由とその影響を徹底調査!!

2024年7月22日、ボートレース大村では前検が行われ、オーシャンカップで5節目を迎えた今のエンジン(※2024年6月19日のシリーズから使用)を使用中は次にあげる整備について、追加規定が通達されたことが明らかになりました。
その内容は次のとおりです。
①シリンダーケース交換はなし(事故等による変形等は除く)
②キャリアボデー交換は抽選で節間1回まで(戻すことは可能)
これらの内容は、直近のSGグランドチャンピオンでの異例の事態を考慮したものと考えられます。

最近のボートレース界の“話題”といっても過言ではない「セット交換」。
真夏の大一番・オーシャンカップの開幕直前に【シリンダーケース交換はやむを得ない事情を除いて禁止】と通達されたということは、つまり「セット交換は原則禁止」と言われたのと同じこと。

直近のSGグランドチャンピオンでは、選手の半数近くである24人もの選手がセット交換を実施。
しかも、この整備を施してからはモーターが別物にうまれ変わり、エンジンパワーの向上が目に見ても明らかになったことで、結果として優出した選手の大半がセット交換の実施者という圧倒的な違いが出てしまいました。

今回の大村競艇場からの通達は、この状況を受けて早急に対応したものと推測できます。
しかし、以前から認められていたはずのセット交換が、なぜ今になってここまでの注目を集めたのか…

ここでは、今回の通達について解説するとともに、競艇の基礎知識となる「セット交換」についての説明、メリットとデメリット、グランドチャンピオンでセット交換が相次いだ背景、“艇界の絶対王者”こと松井 繁選手が呈した苦言についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

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目次

ボートレース大村からの通達

2024年7月23日、大村競艇場では「第29回 オーシャンカップ」が開幕初日を迎えます。
その前検日である7月22日、記者席に1枚の文書が配布されました。

そこに記されていた内容は以下のとおり。

大村ボートは参加選手の公平性を期すため、<1>~<3>の3つのルールを定めた。
6月の尼崎SGグランドチャンピオンでは、セット交換(シリンダーケース、ピストン4個、ピストンリング4本の交換)をする選手が続出し、舟足の変化が話題になっていた。

<1>セット交換なし。

<2>シリンダーケース交換なし(事故等による変形等は除く)。

<3>キャリアボデーは抽選により、交換可能。ただし、選手が希望するキャリアボデーを交換できるわけではなく、抽選によって選ばれたものを使用する。節間で1人1回だけ交換可能。

引用元:【ボートレース】大村SGオーシャンカップはセット交換禁止/大村SG – ボート : 日刊スポーツ (nikkansports.com)

つまりは、“第29回 オーシャンカップにおいては、セット交換を原則禁止する”という内容でした。

セット交換については、6月25日~30日に尼崎競艇場で開催された「第34回 グランドチャンピオン」で出場選手の約半数にあたる24名もの選手がこの整備を実施するという異例の事態に発展。

しかも、この整備を施してからはモーターが別物にうまれ変わり、エンジンパワーの向上によって、開催前のモーター評価が全く当てにならず、なんとも予想が難しいシリーズとなったことは事実。

さらに、優勝戦に駒を進めた選手6人中5人がセット交換をしていたことから、大きな話題を集めていました。

この事態を鑑みたうえで、今回の通達がなされたことは容易に想像できます。
ではなぜ、以前から認められていた整備であるセット交換が、ここにきて急にブームとなったのでしょうか?

オーシャンカップでの「セット交換禁止」に対するSNSの反応

大村競艇場の「オーシャンカップでのセット交換禁止通告」を受けて、SNSにはどのような声があがったのでしょうか?

直近のグランドチャンピオンでセット交換が続出して、その成果が目に見えて明らかだった背景があるだけに、“批判的な内容”も一定数あるだろうと予想していましたが、そのような投稿は想像していたほど多くはありませんでした

むしろ、ほとんどの競艇ファンが賛同や否定ではなく、“ボートレースの公平性”や“今年交換したモーターの質”について投稿し、なかには“日本モーターボート競走会に苦言を呈する声”があったのが印象的でした。

迅速な対応はよほどのことか』『(セット交換禁止は回モーターの選手にとって)逆に不公平になりそう』『誰に向けての公平を期すためなのか教えてほしい』というメッセージの他に、『セット交換禁止とかでなく、なぜ増えてるのか原因究明が先でね?』『舟券を購入するお客さんが大会を楽しめているかどうか競走会と施工者さんはちゃんと見て今後に活かしてください』という投稿も。

これらの言葉が、競艇ファンの心中を最もよく表現していることから、ボートレースを運営する組織だけでなく、競艇に携わる多くの人々に「“セット交換”や“誰にとっての公平性”が必要なのか」を、今一度問いかけてほしいと感じました。

SNSに投稿されていた反応の一部を抜粋してご紹介します。

グランドチャンピオンと今回の通達の関連性を指摘する声

https://twitter.com/Uma3_mn23/statuses/1815779196922388906

ボートレースの“公平性・公正性”についてあがった声

今年のモーターが昨年に比べて性能が劣化しているとする声

日本モーターボート競走会に対する意見

https://twitter.com/cha_cha_town/statuses/1816792594916979144

セット交換とは?

ボートレースにおける「セット交換」とは、エンジン本体の“心臓部”となる、シリンダーケースとその中にあるピストン・ピストンリングをそのまま総取り替えすることを指します。

セット交換で交換される部品は次のとおり。

  • ピストン:2個
  • ピストンリング:4本
  • シリンダーケース

ここはエンジンのパワーを生み出す動力源で、このケース内で気化したガソリンを爆発させてプロペラを回して、推進力とするため、まさに“肝心要”の部分です。

モーターにとって重要な部品をまとめて交換することで“モーターパワーの性能を大きく向上させる”ことを目的とし、上手くいけば良い効果を得ることができる“奥の手”ともいえる整備方法と言えるでしょう。

今までは、“ピストンリングのみ”“ピストンだけ”の交換といった整備は少なくありませんでした。
しかし、シリンダーケースの交換にまで至ると、もはや“大手術”レベルの大きな整備となります。
ここまでの整備をするとなれば、手間も時間もかかる、なかなか着手しにくい代物。
そのため、セット交換という整備方法は、選手にとって『ワースト級のモーターにだけ施す苦肉の策』だったのです。

もし、節間に選手がこの整備を施したとすれば「イチかバチかの大勝負」に出たと判断することもできます。
それは機力が向上するかどうかは定かではないためで、セット交換を施す選手の心境は『上手いけば上等の一発勝負』といったところでしょうか。

無知なネコ

そういえば…なんで“セット交換”って言うんだろう?
ピストン・ピストンリング・シリンダーケースが“セット”って意味なのかな?

おなご

“セット交換”という呼び方は、もともとはボートレース界のものではなかったみたいだよ。
最初につかわれたのは、オートレースの選手コメントに使われていたものという説が濃厚みたい!

ボートレースの部品交換の基礎知識

ここまで「セット交換」がどういうものかについて述べてきました。
しかし、そもそもボートレース初心者の中には“部品の名前”と“役割”という基礎の部分から知りたいという方もいるのではないでしょうか?

そのため、ボートレース公式YouTubeチャンネルと人気女子レーサーの平山 智加選手のYouTubeチャンネルで公開されていた動画をもとに、セット交換に関わる部品について簡単にご説明します。

#15部品交換ってなに?│BOATSCOOP│【ボートレース公式BOATRACE official】

出典:ボートレース公式 BOATRACE official
  • 徹底解説「ボートレースエンジン」の取扱説明書を作成してみた
出典:平山智加 Chika Hirayama
  • 【これが重要】知らなきゃ損!部品交換【優勝SBR秘話】
出典:岡村仁のスタディーボートレース

まずは、この記事で最も重要となる「セット交換」に直接関わる3つの部品についてご説明します。
その部品というのが、1.ピストン・2.ピストンリング・3.シリンダーケースです。

その後に「セット交換」とは直接関わらないものの、整備を施すうえで重要な6つの部品(4.プロペラ・5.ギヤケース・6.キャブレター・7.電気一式・8.キャリアボデー・9.クランクシャフト)についてもご説明しますので、ぜひご覧ください。

今後、ボートレースを予想していくうえで参考になるはずですので、覚えていて損はないですよ。

「セット交換」に直接かかわる3つの部品

1.ピストン

【部品説明】

シリンダー内を高速で動いている部品で、ピストンが前後に動きエネルギーを生み出す構造になっています。
ちなみに、モーターにはピストンが2つ付いています。
ピストンがシリンダー内の燃焼室で発生した燃焼ガスの熱膨張により往復運動することで、クランクシャフトへ動力を伝え、同時に吸気と排気の開閉を行う仕組みです。

【交換する目的】
ピストンを交換する主な目的は、スタート時の加速アップです。
また、試運転時にモーターの調子が悪そうな場合にも交換され、2気筒のモーターに搭載される2本のピストンのうち、片方もしくは両方を交換することで調整可能です。
転覆した際に交換されることが多いこともピストンの特徴といえます。

【舟券への影響】
ピストンの交換は大きな作業になりますが、バランス調整の意味合いが強く、舟券への影響は低いと考えられます。

【気に留めておくこと】
ピストンを3本以上交換していた場合は注意が必要です。
この場合、モーターがパワー不足に陥っていることが原因で交換している可能性があります。
逆に、1本や2本の交換であればモーターのパワーを上げるためなどの“前向きな整備”であると判断できるでしょう。

2.ピストンリング

【部品説明】
ピストンの前後の動きを円滑にする役割を果たしている部品です。
ピストンリングは部品の中で最も交換頻度の高い部品の1つで、モーターの性能に大きく影響を及ぼす傾向にあり、モーター調整の中でも特に重要なポイントの1つになります。
また、ピストンリングはピストンの運動を円滑にするだけでなく、隙間から空気とガソリンを霧状にして混ぜた「混合気」が漏れるのを防ぎ、熱効率を高く保持できるという特徴があります。

【交換する目的】
交換する主な目的は、モーター性能を向上させることです。
ピストンリングを交換することで、ピストンの運動がスムーズになって、モーターのパワーアップが期待できます。
また、摩耗によって頻繁に交換されるため、状況に応じて新品と中古のいずれかを選ぶことが可能です。

【舟券への影響】
ピストンリングを交換しても、モーターの性能に大きな差はないとも言われており、舟券への影響度は低いと考えられます。

【気に留めておくこと】
ピストンリングを3本以上交換している場合には注意が必要です。
3本以上を交換するということは、“レースで使うことができない状態”を意味するので、活躍はあまり期待できません。

3.シリンダーケース

【部品説明】
ピストンが通る筒の形をした部品です。
シリンダーケースの中にはピストンとシリンダーが入っています。
クランクケースから送られた混合気を吸気口より取り込み、ピストンによって圧縮された混合気にスパークプラグで着火し爆発燃焼をおこします。
その爆発の力を使ってピストンを往復運動させ、燃焼したガスを排気口へ排出する役目を果たす部品です。

【交換する目的】
シリンダーケースを交換する主な目的は、燃焼効率を上昇させてモーター本来の力を発揮できるようにすることです。
そのため、交換するということはモーターの状態が悪い場合がほとんどです。
また、シリンダーケースは大幅にパワー上昇を目指す際に交換します。
クランクシャフトの次に大幅な整備が必要となるでしょう。

【舟券への影響】
シリンダーケースの交換があった場合は注意が必要です。
シリンダーケースはパフォーマンスに直結する大切な部品であり、交換されていても良いレースができる状態ではなく、何か致命的な問題が起きたと考えるべきでしょう。
モーターの整備履歴を見て、シリンダーケースを交換している場合は、その舟券の購入は避けたほうが無難です。

「セット交換」とは直接関わらないものの、整備を施すうえで重要な6つの部品

4.プロペラ

【部品説明】
別名「ペラ」とも呼ばれ、モーターに取り付けられる部品です。
羽の回転によって後方に向かう水流が起き、ボートの推進力を作ります
以前は持ちペラ制が採用されていたため、レーサーがそれぞれに保有していましたが、現在はヤマト製のプロペラが抽選によって各レーサーに配布されます。
モーターとは異なり、ボートレーサーがハンマーで叩いて調整するため、レーサーの調整技術が大きく影響する部品です。

【交換する目的】
プロペラは破損が生じた際にのみ交換するケースがほとんどです。
亀裂や変形などの交換基準が設けられており、それを超えると新しいプロペラに交換します。

プロペラはモーターの抽選時にセットになって付いてくるもので、プロペラを調整する場合はアナウンスをしません。
しかし、プロペラ自体を交換した際は展示航走時にアナウンスされます。

【舟券への影響】 
プロペラは、レーサー自身が木製ハンマーで叩いて自分好みの形に変更する部品。
何度も叩いたり歪みが生じたりした場合には、整備士と相談して交換することもあります。
レースへの影響は少ないものの、気温や気候に合わせてモーターの回転数を調整するケースも。
ボートレーサーの特徴が色濃くでるという部分では、影響を考慮する必要がありますね。

5.ギヤケース

【部品説明】
プロペラと直結するパーツで、モーターから伝わる縦回転を横回転に変換する部品です。

ボートは車とは異なりギヤが1つしかなく、変速はできないものの、しっかり整備することで車のローギヤのようにもできます。
多くのボートレーサーがその感触を意識して整備する部分でもあります。

【交換する目的】
ギヤケースを交換する主な目的は、「横回転が不安定」「破損している」「部品に歪みがあり、水流が安定しない」といった問題点を解消することが目的です。
プロペラの取り付け部品にギヤを上手くかみ合わせることで出足のアップが期待できます。

一方で浅く嚙合わせることで伸びを付けることも可能です。
ちなみにギヤケースは後述するキャリアボデーと一体になっている点も認識しておきましょう。

【舟券への影響】
ギヤケースはしばしば交換される部品です。
調整しやすい部品でもあるのでレースへの影響はそれほど大きくないでしょう。

【気に留めておくこと】
ギヤケースの交換によって出足型や伸び型を選びやすく、交換後は変化が分かりやすい部品の一つです。
交換しているということは、あまり良くないモーターでもある可能性もあるので、展示では念の為に確認しておきましょう。

6.キャブレター

【部品説明】
キャプレターとはモーターのパワーを司る部分で、空気とガソリンが混ざった混合気をモーターに噴射する部品です。
ガソリンを噴射できなければ、正常な爆発エネルギーが得られません。
また、不十分な空気の噴射では不完全燃焼が発生して、エネルギーのロスにもつながります。
キャプレターが悪いとスタートに大きく影響し、大幅にスタートが遅れた場合はキャブレターの不調が原因である場合が多いです。

【交換する目的】
交換する主な目的は、燃焼効率を向上させてモーター性能の底上げをすることが目的です。
天候に応じて交換するケースもあります。
キャブレター調整によってモーターの性能も変わってくるため、ボートレーサーの腕の見せ所
また細かい部分にゴミや塩が詰まるケースもあり、分解後は洗浄液に漬けて再度乾燥させるという作業を行います。

【舟券への影響】
天気によってキャブレターの交換が行われることもあれば、ボートの状態を見て交換されることもあったりと、それなりに交換頻度の高い(=交換のハードルが低い)部品のため、舟券への影響度はそれほど考慮する必要はないかと思います。

【気に留めておくこと】
前述のとおり、ボートレーサーの腕によって調整技術に差があり、交換にはボートレーサーの判断が重要なポイントとなる点を考慮すべきでしょう。

7.電気一式(電気系統一式)

【部品説明】
シリンダーに送られた混合気に引火させ、点火プラグに送る電気を生み出す部品です。
ちなみに、点火プラグのみがボートレーサーの持ち物となります。
フライホイールの回転によって生じる低圧電流から、イグニッションコイルによる高圧電流を発生させます。
そして適切なタイミングで、燃焼室内でスパークプラグに火花を飛ばす役割をしているのがこの電気一式(電気系統一式)です。

【交換する目的】
電気一式(電気系統一式)を交換する主な目的は、シリンダー内の点火効率をアップさせることが目的です。
交換することでシリンダー内の点火効率が高まり、点火効率がアップするとモーターのパワーアップにつながり、ボート本来のスピードを取り戻せます
電気系統の配線を交換せず、劣化したままの状態だとパワーダウンを起こし、本来のパフォーマンスを発揮できない場合が多くあるのです。
また転覆によりモーターが水に浸かった場合はモーターを分解し、灯油で洗浄します。
しかし、この電気一式(電気系統一式)は洗浄できないため、交換が必要となってしまいます。

【舟券への影響】
電気一式(電気系統一式)を交換するのは前走で転覆した場合がほとんどです。
モーターが水没した際のダメージは大きく、現状維持もしくは不調となっている可能性も十分に考えられます。
交換されるということは、転覆前より調子が悪くなっていると考えるほうが無難と言えます。

8.キャリアボデー

【部品説明】
モーターとプロペラの中間に位置する部品です。
排気ガスの通り道にあたる部分のため、他の部品との接続によって出力が大きく変わります。
キャリアボデー本体はパワーを生み出す部品ではありませんが、事故やトラブルによって破損や歪みが生じた際に交換されることの多い部品です。
車でいうとマフラーのような位置付けで、衝撃等で歪んでいると乗り心地が悪くなります。

【交換する目的】
キャリアボデーを交換する主な目的は、ボートの操作性の向上が目的です。
事故等によってキャリアボデーに何らかの異常が起きていた場合、ボートの乗り心地や操作性が低下してレースの勝敗に大きな影響を与えます。
キャリアボデーの交換によって排気ガスがスムーズに通るようになり、モーター性能が向上するため、乗り心地や操作性が改善されるのです。

【舟券への影響】
キャリアボデーは、成績があまり良くない時やモーターのパワーを上昇させたい時に交換される部品です。
キャリアボデーを交換している場合は、特に展示航走で注目しましょう。
展示航走で状態が悪いと判断した際は、舟券の対象から外してもよいかもしれません。

9.クランクシャフト

【部品説明】
モーターの中核部であり、モーターを構成する最も重要な部品です。
クランクシャフトが機能しなければ、そもそもボートは動きません。
クランクシャフトはコンロッドを介してピストンの往復運動を回転運動に変え、動力を取り出す役目を果たすことでボートを動かしています。
現用のモーターは直列2気筒で、等間隔爆発方式です。

【交換する目的】
交換する主な目的は、モーターの回転を改善することが目的です。
他の部品を一通り整備してもなおモーターの調子が悪い場合や、衝突・転覆が起きた際に交換されます。
なぜならクランクシャフトにねじれや歪みがあると、そのまま性能に影響を及ぼしてしまうためです。
このことから、クランクシャフトを交換するのは”最終手段”と考えてよいでしょう。

【舟券への影響】
前述の通り、クランクシャフトの交換は滅多に行われるものではなく、交換される時はモーターに大きな問題が生じている場合がほとんどです。
交換後すぐに元の性能に戻るとは考えにくいので、舟券への影響度は大きいでしょう。
モーターの整備履歴を見て、クランクシャフトを交換しているボートレーサーがいた場合、その舟券を買うのは避けたほうがよいでしょう。

セット交換のメリットとデメリット

ここまで述べてきた内容から、「セット交換」はボートレースにおいて非常に重要な整備ということがお分かりいただけたと思います。
しかし、利益を得るために変化をきたせば、何かしらの不利益が発生するのが世の理。

では、「セット交換」にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
下記のとおり、表とリストでわかりやすくまとめました。

やはり、セット交換は『ハイリスク・ハイリターン』と言わざるを得ない整備方法のため、セット交換を選択するといううことは『起死回生の一発逆転ホームランを狙う大博打』といったところでしょう。

メリット
デメリット
  • モーターパワーが大きく向上する
  • 大きな整備となり、手間と時間がかかる
  • モーターの機力が向上するかどうかは定かではない
  • イチかバチかの大勝負!

メリット

  • 上手くいけばモーターパワーの性能を大きく向上させられる

デメリット

  • シリンダーケースまでの交換になると“大手術”レベルの大きな整備となり、手間と時間がかかる
  • モーターの機力が向上するかどうかは定かではない
  • セット交換を施すとしても、元に戻すとしても大仕事であり、イチかバチかの大勝負!

どうしてグランドチャンピオンでセット交換が相次いだのか?

ここまで述べてきたとおり、『ハイリスク・ハイリターンの大博打』とも言えるセット交換。
それにもかかわらず、グランドチャンピオンではセット交換を施す選手が続出するという異例の事態が発生しました。

ではどうして、グランドチャンピオンという大舞台で一流のボートレーサー達が相次いでセット交換という選択に至ったのでしょうか?

これは「年ごとに違うエンジンの性能」と「新しいエンジンに交換されたばかりの時期」という、2つの条件が重なったためです。

パッと見では皆同じように見えるエンジンですが、年ごとに出来・不出来が大きく異なっていることは周知の事実。

ここからは個人的な意見ではありますが…
要するに、今年下ろされたエンジンは昨年のものと比べて、“出来が悪い”ということだと考えます。

SG競争というトップレーサー同士の大事な局面で、是が非でも勝ちたいと思うのはレーサーの性。
特に「SGの中のSG」と言われるグランドチャンピオンでは、トップレーサー同士の戦いとあって、選手の実力差はそこまで大きくありません。
そのため、このレースで活躍できるか否かはモーターの機力が大きく影響することも確か。

ちなみに、競艇専門誌マクールの公式note「艇言」では、グランドチャンピオンのセット交換について、次のように掲載されていました。

ボートレースのエンジンは1年に1度交換されるが、整備用に前回の使用エンジンを何基か取り置いている。そのほとんどが素性の良かったエンジンだ。
そのエンジンから部品を取って、ピストン2個、リング4本、シリンダーケースを丸ごと交換することを「セット交換」と呼ぶ。するとエンジンは別物に生まれ変わる。
尼崎グラチャンでもセット交換をした選手のほとんどが足の上積みに成功していた。
それにしてもこの数は異常というしかない。なぜ、そこまでセット交換にこだわるのか。
ある関係者は前回のエンジンの方が部品の質がいいのではないかと話した。
(中略)
尼崎グラチャンで使用されたエンジンは4月23日が初おろし。最大でも4節しか使用されておらず、本体整備が解禁されたのも5節目(6月6日初日)からだった。
エンジンの素性もはっきりしておらず、我先にとセット交換へ走った気持ちも分かる。

引用元:松井繁「あんなもん、整備でも何でもない」SGで大流行したセット交換の真実 / 艇言|マクール公式note

そのような背景を考慮すれば、“機力の劣る下ろしたてのエンジン”に“性能の良かったエンジンの部品”を交換できるセット交換は『十分に機力の向上を狙える最適解』。
しかも、セット交換を施した選手のモーターの大半が良化していることが目に見ても明らかな“勝ち戦”。

これでは、選手が『セット交換をやればほぼ確実に良くなる!それでやらないのは損!!』と考えてもおかしくはありません。
流行に敏感なボートレーサー達ですから、その後どのような行動に出るのかは簡単なことでしょう。

以上がグランドチャンピオンでセット交換が続出した理由だと考えられます。

尼崎ボート・SGグラチャン】池田浩二 今節24人目のセット交換で優出「そんなに変わりはなかった」

【尼崎ボート・SGグラチャン】池田浩二 今節24人目のセット交換で優出「そんなに変わりはなかった」

予選突破後の整備もあって、優出決めた池田浩二

2024年6月29日 23:23

 ボートレース尼崎のSG「第34回グランドチャンピオン」は29日、準優勝戦が行われた。

 準優11R、池田浩二(46=愛知)は3コースから握って、2番手争いに参戦。2M冷静に差して2着を確保した。予選突破を決めた後に「セット交換してる人と足の差があり過ぎて、比較にならない。僕もやってみようと思う」と話していた通り、準優前にピストン、リング、シリンダを交換した。

 今大会のキーワードとなっているセット交換。現行エンジンが使用開始から2か月しか経過していないこともあって、セット交換組が大幅に機力アップ。4日目までに23選手がセット交換。池田が24人目となった。

 準優後は「セット交換したけど、一瞬の上がりが良くなったかなというぐらい。そんなに変わりはなかった。どの足も大したことはない」とコメントはもうひとつだったが、舟足は良化。さらに交換した部品がなじめば気配が上向くケースもあるだけに、優勝戦も目が離せない。

引用元:【尼崎ボート・SGグラチャン】池田浩二 今節24人目のセット交換で優出「そんなに変わりはなかった」 | 東スポWEB (tokyo-sports.co.jp)

セット交換が引き起こした悪い影響

直近のグランドチャンピオンでセット交換が続出したことにより、今大会では“開催期間中に舟足が変化し続けるという珍事”が発生しました。

競艇ファンからすれば、前日の仕上がりを参考に予想を組み立てることができないという非常に困った状況であることから、批判が上がったことも事実。

もちろん、一緒にレースで争う選手たちにとっても一大事であり、相当な意見があったことは間違ありません。

そのため、ファンや選手からの批判を重く受け止めた日本モーターボート競走会が早急に対策を講じたという見方が最も有力であり、このような状況が「セット交換禁止」という通達に繋がった理由と言えるでしょう。

ここでも、競艇専門誌マクールの公式note「艇言」に掲載されていた、グランドチャンピオンのセット交換についての記述をご紹介します。

セット交換が与えるレースへの影響のほかに、ボートレース界の売り上げにも関わる重要案件であることがよくわかる内容です。

セット交換をして機力がアップするのではあれば、いいことだらけではないか、と思うかもしれない。しかし、セット交換されたエンジンは別物となる。
これまでのエンジン気配などのデータがリセットされてしまうのだ。
24人も交換してしまうと、エンジン相場はがらっと変わってしまう。
ボートレース業界はエンジンの差をはっきりさせて、エンジンで買ってもらおうと努力してきた。しかし、その相場が逆転してしまえば、舟券は買いにくくなる

引用元:松井繁「あんなもん、整備でも何でもない」SGで大流行したセット交換の真実 / 艇言|マクール公式note

セット交換の嵐に対するSNSの反応

グランドチャンピオンに対するSNSの投稿件数で最も多かったのは、「優勝した土屋 智則選手に対する祝福」でした。
その一方で、同じくらい大きな話題となったのが「セット交換に関する投稿」で、数多くの投稿がされていました。

2024年のグランドチャンピオンのキーワードを挙げるとするならば、まさに「セット交換」でしょう。
出場選手の半数近くにあたる24人がこの整備を施し優勝戦出場者の6人中5人がこの整備を施しています。

「セット交換」によってモーターの底力がアップし、レース足が向上する効果が如実にあらわれたことが、ここまで大きな話題に発展した理由でしょう。

このため、グランドチャンピオンのシリーズ全期間を通して、モーターの機歴はほぼ通用せず、セット交換を行った選手が急にランクインするなど、日替わりの傾向が強かったように感じます。

このことから、2024年7月のSGオーシャンカップでは“セット交換が禁止”になるなど、競艇界に大きな影響を与えたと言っても過言ではありません。

SNSに投稿されていた反応の一部を抜粋してご紹介します。

https://twitter.com/m24591858/statuses/1805763731349291473
https://twitter.com/hiyokochan1228/statuses/1810852310807105995

競艇界の絶対王者・松井 繁選手からの苦言

競艇界の重鎮であり、「絶対王者」の異名を持つレジェンドレーサーの松井 繁選手。
そのような人気と輝かしい戦績を併せ持つ、松井 繁選手がセット交換を選択する選手に対して苦言を呈しました

「いいエンジンの部品を取ってくるのだから、良くなるのは当たり前」
「あんな恥ずかしいこと(セット交換なんて)できへん。(良くなることが)分かっててやれる気持ちが分からん。SG用に(いいエンジンを)残す必要なんかない。あんなもん、整備でも何でもない」と一刀両断した。

引用元:松井繁「あんなもん、整備でも何でもない」SGで大流行したセット交換の真実 / 艇言|マクール公式note

ボートレース界を長年けん引して戦ってきた、これだけの選手がはっきりと口にした辛辣な言葉。
これを聞いた後輩選手たち、そして競艇ファンはどう感じたのでしょうか?

ベテラン選手の「セット交換」を拒絶するような意見を聞いて、日本モーターボート競走会をはじめ、多くの選手が“セット交換の必要性や公平性、本来の用途について一度立ち止まって考えるべき”だと感じたに違いありません。

“勝負の世界に手段は関係ない”なんて漫画の一コマのようなセリフも聞こえてきそうな状況ではありますが、公営ギャンブルであり『公平・公正の理』を掲げて、守り続けるボートレースだからこそ、競技の透明性を保つためにも、不信感を与えるようなことないように、今こそが時代の変化に即したルールの改定が求められる局面なのかもしれません。

競艇ファンに混乱を招く「セット交換」に苦言を呈した松井 繁選手の発言を重く受け止める必要があるように感じました。

松井 繁選手ってどんな選手?

名前
(フリガナ)
松井 繁
(マツイ シゲル)
登録番号3415
生年月日1969年11月11日
身長168cm
体重52㎏
血液型O型
支部大阪
出身地大阪府
登録期64期
級別A1級

松井 繁選手は1969年生まれ、大阪支部所属のA1級レーサー。
圧倒的なインでの強さに定評があり、イン寄りのコースが狙える時にはインを取りに来るだけではなく、アウトよりの艇番であってもイン寄りを狙ってくる選手です。
さらに、アウトコースからでも連に絡んでくる強さも特徴だと言えます。

円熟の域に達していると称されるほどのテクニックと“千変万化”のレーススタイルで、どのコースからでも1着を狙えるほどの尋常でない強さを持ち合わせいることから、『全ての要素において穴がないオールラウンダー』とでも言うべき選手なのです。

現在もA1級でSGのタイトルレースには必ず出場しているほどの活躍をしており、実力は間違いなくトップクラスのレジェンドレーサーです。

また、奥様との間には3人の娘さんがいて、特に三女の朝海さんは「第53回 ミス日本コンテスト2021」でグランプリに選出された経歴を持つ美女として話題となりました。
父である松井 繁選手自身がダンディーで端正なお顔立ちですから、そのDNAを引き継いだ娘さんがお美しいのは納得でしょう。
最近では父娘揃ってトークショーに参加するなど、仲の良さが垣間見えます。
ちなみに、共演したトークショーでは朝海さんからは普段「ゲルちゃん」もしくは「ゲル」と呼ばれていることを明かしています。

また、渋いルックスとギャップが生まれるくらいにトーク内容が面白いことでも知られています。
ストイックな職人気質の選手というイメージをお持ちの方は、ぜひ一度、松井 繁選手が出演されているYouTube動画を視聴してみてください。
きっとその魅力に引き込まれるはずですよ。

  • 王者・松井繁 6年振りの戸田水面を連勝で締める!│BOATCAST NEWS 2024年3月20日│
出典:ボートレース公式 BOATRACE official
  • ターンマーク坊やTV vol.87松井繁
出典:【公式】ボートレース大村(メインch)
  • ボートの時間! # 434 「松井繁&松井朝海 親子トークショー」2024年7月21日放送【サンテレビ】
出典:【公式】ボートの時間!
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出典:【公式】ボートの時間!
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出典:ボートレース蒲郡公式YouTubeチャンネル

松井 繁選手の過去戦績

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日付レース名レース場グレード戦績・概要
1989年5月13日一般競争住之江一般デビュー
1989年7月11日タイトル戦住之江一般初勝利
1990年8月新鋭リーグ芦屋一般初優勝
1992年5月開設36周年記念 戸田グランプリ戸田G1G1初優勝
1996年5月27日第23回 笹川賞児島SGSG初優勝
2009年7月14日G1 モーターボート大賞G1通算1,500勝達成
2011年6月9日G1 大渦大賞開設56周年記念競走鳴門G1通算100優勝達成
史上12人目
2011年12月25日第26回 賞金王決定戦住之江SG生涯獲得賞金30億円突破
公営競技史上初
2023年5月27日SG 第50回 ボートレースオールスター芦屋SG生涯獲得賞金40億円突破
公営競技史上初
2023年8月4日tysテレビ山口杯争奪戦徳山一般通算2,500勝達成
史上40人目

松井 繁選手は、本栖研修所の卒業記念競走を準優勝で卒業して、1989年5月13日に大阪支部のホームプール・住之江競艇場で開催された「一般競争」でデビュー、同年7月にはたった2ヶ月で初勝利を飾っています。

初勝利の後も勢いは収まることなく、半年でB1級に昇格し、デビュー翌年の1990年にはA1級に昇格するほどの大活躍をしたことから、新人時代からて将来を有望視されていたことがうかがえます。

そして、デビューから1年3か月後の1990年8月に芦屋競艇場で開催された「新鋭リーグ」で早くも初優勝を果たし、2011年6月9日には史上12人目となる通算100優勝、2023年5月27日には「SG・第50回 ボートレースオールスター」で公営競技史上初となる生涯獲得賞金40億円を突破、そして直後の2023年8月4日には史上40人目の通算2,500勝を達成しています。

G1競争で見ると、1992年5月に戸田競艇場で開催された「開設36周年記念 戸田グランプリ」でG1初優勝の栄冠を手にしました。

SG競争でもその勢いは衰えることを知らず、デビューから7年後の1996年5月に児島競艇場で開催された「第23回 笹川賞」でSG初制覇を果たして、現在のボートレースオールスターのタイトルを獲得したのです。

1997年5月以前のデータについては確認できませんでしたが、級別については、2000年後期から現在までA1級を維持しており、実に確認できた選手生活24年のうちの全期間でA級を維持するという素晴らしい成績でした。

また、2006年前期には優出10回・優勝3回という好戦績を積み上げて、自己最高勝率8.79を記録。
さらに最近では、2023年前期に優出6回・優勝3回の戦績と勝率7.50という全盛期には及ばないものの、勝率7.00以上で強い選手と判断される十分な成績を残しており、まだまだ現役のトップレーサーと呼ぶにふさわしい活躍を続けています

また、2024年5月27日現在、松井 繁選手が現役最多記録を有しているのは、「通算416優出142優勝」「G1の179優出59優勝」「SGは68優出12優勝」の3つの優勝回数。
そして、こちらはボートレース界だけではなく、公営競技史上初の生涯獲得賞金40億円超え(40億9万5,802円)という記録も保持しているのです。

この記録は、生涯獲得賞金が40億円超えた当時のものですので、現在も記録は更新され続けています

出典:BOAT RACE公式サイト

SG獲得タイトルと優勝歴

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優勝回数優勝戦実施日レース名レース場決まり手戦績・概要
初制覇1996年5月27日第23回 笹川賞児島恵まれ笹川賞(現:ボートレースオールスター)初制覇
2回目1998年7月20日第3回 オーシャンカップ三国逃げオーシャンカップ初制覇
3回目1999年12月23日第14回 賞金王決定戦住之江まくり賞金王決定戦(現:グランプリ)初制覇
4回目2001年5月20日第28回 笹川賞浜名湖まくり差し2度目の笹川賞制覇
5回目2006年7月30日第11回 オーシャンカップ若松逃げ2度目のオーシャンカップ制覇
6回目2006年12月24日第21回 賞金王決定戦住之江逃げ2度目の賞金王決定戦制覇
7回目2008年3月30日第43回 総理大臣杯児島逃げ総理大臣杯初制覇
(現:ボートレースクラシック)
8回目2008年7月27日第13回 オーシャンカップ蒲郡逃げ3度目のオーシャンカップ制覇
9回目2009年10月13日第56回 ボートレースダービー(全日本選手権)尼崎逃げボートレースダービー初制覇
10回目2009年12月23日第24回 賞金王決定戦住之江差し3度目の賞金王決定戦制覇
11回目2013年7月28日第18回 オーシャンカップ若松抜き4度目のオーシャンカップ制覇
12回目2018年3月23日第49回 ボートレースクラシック(総理大臣杯)尼崎逃げ2度目のボートレースクラシック制覇

このほかにも、2023年7月30日現在、G1競争では通算58勝。
全24場中22場でG1タイトルを獲得しており、まだ優勝できていないのは江戸川競艇場と徳山競艇場のみとなっており、一般戦を含めた優勝歴では「全国24競艇場制覇のリーチレーサー」にも名を連ねています。

PG1の優勝歴は1件で、2023年1月15日にびわこ競艇場で開催された「BBCトーナメント」で絶好枠の1号艇を手にすると、圧倒的な逃げで押し切って、同大会初優勝にして史上4人目となるボートレースの全階級制覇を達成しました。

MMCトーナメントとは、ボートレースバトルチャンピオントーナメント(BOAT RACE BATTLE CHAMPION TOURNAMENT)の略称で、1年間のビッグレースの開幕戦として行われています。

松井繁ボートレース“全階級制覇“達成 史上4人目 トップSから逃げて圧倒/びわこPG1

松井繁 ボートレース“全階級制覇“達成 史上4人目 トップSから逃げて圧倒/びわこPG1

[2023年1月15日17時29分]

チャンピオンベルトを手にした松井繁

<びわこボート:BBCトーナメント>◇PG1◇最終日◇15日

王者がPG1初制覇で、史上4人目となるボートレース“全階級制覇”を達成した。SG・12冠、G1・58度Vの松井繁(53=大阪)が、誰も寄せ付けない圧倒的な逃げ切りでVを果たした。

進入はS展示が123・456。本番も123・456の枠なり3対3。スリットは松井がトップタイミングのコンマ11で通過。慌てず騒がずきっちりと先マイに成功。バックで差し伸びた丸野一樹(31=滋賀)を抑え、2M先取りで勝負を決めた。

松井は「枠に関しては運もあったんですけど、うまく1節通していけました。実は行き足が甘いと思って、直前にペラの調整もしたんですけど、落ち着いていくことができました。(23年は)賞金王(グランプリ)に行きたいので、これをいいきっかけにして今年1年頑張りたい」と喜びを口にした。

引用元:松井繁ボートレース“全階級制覇“達成 史上4人目 トップSから逃げて圧倒/びわこPG1 – ボート : 日刊スポーツ (nikkansports.com)

ボートレーサーを志したきっかけ

松井 繁選手がボートレーサーを目指したきっかけは「父親が経営していた寿司屋の従業員の一言」だったそうです。

以前、日刊SPA!の取材に応えた記事がありましたので、ご紹介します。

――松井さんがボートレースの世界に進んだのは、人の勧めだったと聞きます。

松井:そうね、親父が寿司屋を経営していて、そこの従業員の方から「ボートレーサーに向いてるんじゃないか?」って勧められたのがきっかけですね。モータースポーツとか車とかすごく好きやったし、レースをすることには興味があったんで、じゃあ「やってみよう」って。

引用元:日刊SPA!

高校で3年生に進級して、進路を選択する時期になっても、自分の将来のビジョンを見いだ出せなかった松井 繁選手。
この時は特にやりたいこともなかったので、大学か専門学校を受験するつもりだったそうです。

そんな中、奇しくも「父が経営していた寿司屋の従業員の一言」がきっかけとなり、ボートレーサーを目指すようになりました。

しかも、その従業員というのがボートレースが好きで情報も豊富という偶然が重なり『この子なら体型も丁度いい、向いているんじゃないか?』と養成所の募集案内を渡され、とんとん拍子で本栖研修所(現在のボートレーサー養成所)の試験を受けることに。

松井 繁選手のお父様は『男なら自分の可能性のあるところにいけ』と反対はしなかったそうですが、松井選手自身、内心では『そんな簡単に試験に受かるわけがない』と思っていたそうです。

そんな気持ちに反するかのように、松井 繁選手は本栖研修所の試験を見事に一発合格
前述の従業員の見立てが素晴らしかったことが証明されました。

そして、“64期生”として入所した本栖研修所で終生のライバルである「服部 幸男選手」と出逢ったのです。

服部 幸男選手とのエピソード

新人の頃は『天才の服部』『努力の松井』と呼ばれ、まわりからよく比べられたという二人。

本栖研修所時代の初期、松井 繁選手は度々転覆などを繰り返し、その回数は同期イチで、いつ退学になってもおかしくない劣等生だったそうです。

一方の服部 幸男選手は幼い頃から競艇選手だった父の服部 正彦選手の影響で、ボートレーサーを志しており、実地訓練では事故を繰り返して「落水王」という不名誉な呼び名をつけられながらも、抜群のレースセンスを持ち、同期のなかでも最初から頭一つ抜けた存在だったとか。

そんな“実際に我が身で水面に慣れ親しんだこと”以外は全く正反対の成績だった二人に、ある時から変化が訪れます。
その時期というのが、養成期間も後半に入った実戦形式の研修を行うようになる頃。

それまでは、まくりもできず、差しもできなかった松井 繁選手がある日突然頭角を現しはじめたそうです。

それからというもの、松井 繁選手と服部 幸男選手は二人でばかり練習を繰り返し、日々腕を磨いていったといいます。
この経験がきっかけとなり、今日のボートレース界に名を残すレジェンドレーサー二人が切磋琢磨しながらトップレーサーへの階段を上っていったのです。
そのため、現在でも松井 繁選手と服部 幸男選手は“友人”であり“ライバル”という変わらぬ最高の関係で繋がっています。

その証拠に、松井 繁選手は服部 幸男選手のことを『アイツ(服部 幸男選手)の存在はすごい。もしいなかったら、自分の今があったかどうかはわからない』と話すほどだそう。

最後に、二人の強い絆がよくわかるエピソードをご紹介します。

服部 幸男選手がダービーを制してSG初優勝を飾ったとき、松井 繁選手は表彰式の後も平和島競艇場に残って、ひたすら服部選手の戻りを待っていたそうです。

SG初制覇の記者会見から戻り、自分を祝福するために帰りを待ってくれた松井 繁選手の姿を目にした服部 幸男選手。
その時、切磋琢磨し続けた“唯一無二の友”が自分のためにずっと待ってくれていたことを察したのでしょう。
服部選手の緊張の糸が切れて、抑えていた感情があふれ出し、二人で抱き合って泣きながら喜んだ記憶は、今も鮮明に覚えているそうです。

うれし涙の抱擁の後、二人は焼肉を囲んで祝杯を挙げ、さらに友情を深めたと後に語っています。

服部 幸男選手ってどんな選手?

名前
(フリガナ)
服部 幸男
(ハットリ ユキオ)
登録番号3422
生年月日1971年1月5日
身長168cm
体重54㎏
血液型B型
支部静岡
出身地静岡県
登録期64期
級別A1級

服部 幸男選手は1971年生まれ、静岡支部所属のA1級レーサーです。
1990年代の競艇界を席巻したレジェンド選手として知られ、現在もA1級を維持して、一般戦を中心に活躍を続けています。

元競艇選手の服部 正彦さんを父にもち、父が引退を決めた春に2世レーサーとして1989年5月にデビュー。
そして1992年の全日本選手権競走でSG史上最年少優勝記録となる21歳9か月で初優勝
この記録は、今後も破られることはないであろう最大の偉業となっています。

若い頃は先輩レーサー相手に大暴れをし、現在は静岡支部の重鎮として、艇界の代表選手である佐々木 康幸選手(3909)・深谷 知博選手(4524)・長嶋 万記選手(4190)を弟子にもち、若手の育成には定評があります。
佐々木選手いわく『(師匠の)仕事に対する姿勢、自分への厳しさはマネできない。大きい人だなって思います。』と述べており、競艇の技術面だけでなく、人間性についても己の生き様から後進の目指す道標として重要な役割を果たしているようです。

松井繁が誰にも負けないこと自負していること

松井 繁選手ご本人が、唯一『これだけは誰にも負けない』と自負していることがあります。
それは“努力”と“プロ意識”です。

なんとも「職人気質を感じる言葉」が並びますが、松井 繁選手が長年にわたり、このように素晴らしい活躍を続けることができた理由はこの二つ要素だと言えるでしょう。

第21回新鋭王座決定選のポスター「松井繁」

そして、新人時代から『努力の松井』と称されただけあって、これだけの努力を維持し続けると、もはや『努力も才能の内』でしょう。

そんな松井 繁選手の養成所時代からの“努力”をモーターボート競走会も認めていたようで、その証拠に2007年に大村競艇場で開催された「第21回 新鋭王座決定戦」のポスターにも抜擢されたことがあります。
ポスターには『不器用だった。できる事は努力だけだった。そんな時代があったから今の俺がある。』と記されていました。

そんな松井 繁選手自身は、後に自分が努力することに対して次のようにコメントしています。

  • 「調子が悪いときや、上手くいかないとき、誰でも逃げだしたくなることはあると思うけど、自分の場合はその努力を同じペースでやり続けることが一番の努力だと思っている」
  • 「(自分が)際立ってうまい訳ではない。後輩たちともそんなに差はない、ただ、自信があるところはずっとやり続けられるぶれない精神は誰にも負けない」

これこそが「絶対王者」の志であり、その原動力となっているのだと思います。

さらに、今回の「セット交換」に対する苦言は、この“プロ意識”が言葉となって表れたものなのでしょう。
長年積み重ねてきた史上初・史上最多とつく記録の数々が、日々“努力”を続けた証ですし、これらの輝かしい記録も通過点だと語る松井 繁選手。

生涯獲得賞金40億円を突破した際も、スポーツ報知の取材に対して『(40億円は)日々の積み重ねやから。真面目にあきらめず、一生懸命やってきた結果。だから別にという感じ。通過点やから。75歳までやるつもりなんで、これからも頑張ります』と述べており、この言葉が松井 繁選手の生き様を表しているように感じます。

松井 繁選手の獲得賞金

A1級の第一線で長いこと活躍し続けている松井 繁選手。

SG戦線でも活躍を続け、数々の輝かしいタイトルを獲得しているのですから、もちろん獲得賞金も高額なことが想像できると思います。

 年度 級別 賞金ランキング 獲得賞金
2024年A1
2023年A134位61,831,000円
2022年A127位62,255,000円
2021年A157位44,378,000円
2020年A16位110,177,000円
2019年A123位64,695,000円
2018年A124位57,837,000円
2017年A19位97,413,700円
2016年A16位95,095,000円
2015年A111位79,989,000円
2014年A15位113,559,000円

A1級ボートレーサーの平均年収は約3,000万円といわれているなか、獲得賞金が平均を大きく上回ることから、松井 繁選手は常に賞金ランキングの上位にいることがわかります。

今回の調査では2002年以降の獲得賞金額について調べましたが、22年以上トップ60位以下になったことは一度もありませんでした。
それどころか、2017年まではずっとトップ20位以内にランクインしており、そのうち3度も賞金王に輝いています

とくに2014年はボートレースクラシックのタイトルを獲得して、G1競争では2回の優勝を掴んでいるため、直近の10年間では最も多い獲得金額となりました。
ちなみに調査した期間の中で、最も多額の賞金を獲得したのは、2009年の251,204,000円です。

その金額でもかなりの驚きですが、松井 繁選手は2003年・2006年・2008年・2009年に2億円越えの賞金を手にするなど、さすが公営競技史上初の生涯獲得賞金40億円突破者
単純に選手生活35年で考えても、年収1億円越えで、これだけでも圧倒的な強さは明らかでしょう。
全盛期だけでなく、年を重ねた現在でも賞金ランキングに名を連ねるほどの選手ですから、まさにレジェンドであり『絶対王者』です。

さらに直近3年間の平均年収について見てみたいと思います。
ここ3年は調査期間の獲得賞金ランキングで唯一、トップ30圏外となったこともありますが、平均年収は5,615万円

さらに直近10年間の平均年収を計算したところ、約7,872万円となりました。
全盛期ような1億円越えとはいきませんでしたが、それでもA1級選手の平均年収の2.6倍の金額です。

ひと月に換算すると月収656万円越えですから、もはやトップレーサーって本当に規格外…想像もつかない世界です。

近年は獲得賞金額が6,000万円を超えない年もありましたが、2021年のスランプを底として獲得賞金額が安定して6,000万円を超えていることからも、松井 繁選手の成績が常に良い状態であることがわかります。

松井 繁選手が語る「自身の引退」について

度々、雑誌の取材や出演しているYouTube動画の中で“自身の引退”について触れられる機会が多くなっている松井 繁選手。
その話題をレースに向かって日々努力し続けている選手に向けるのは大変失礼だと思いますが、松井 繁選手は“引退”について次のように語っています。

去年より下手くそになってたり、もうこれ以上、うまくならないと思ったらやめるかな。ただ、まだうまくなれると思えるうちはやめない。夢はこの業界の全部の記録を塗り替えたいと思っている。

まだまだ胸の内で闘志が燃えていることを感じさせる言葉ですが、2024年1月に雑誌「TarZan(ターザン)」の取材にこたえており、その中で自身の引退についてはっきりと断言しています。

「うっとうしいんですわ。常にいつ辞めるのとか聞いてくるから。自分が決めるからほっとけということで、質問されんように75歳だって。歳行ってるから、いつ辞めるのとかあまりにも失礼。一生懸命やってるんですから。今はもう一回賞金王を狙っています。自ら全力を出して、必死でやって、それでももう賞金王になれないと自分で思ったら辞めます。ただ、それだけ。今はとにかくやっていくだけです」

引用元:ボートレーサー・松井繁「もう一度賞金王になる。今はただそれだけです」 (msn.com)

そうですよね、これが松井 繁選手の本心なのでしょう。
これだけの一流選手に身を引く決断・選択肢の話題をちらつかせることなど失礼以外の何物でもありません

この言葉が広まれば、松井 繁選手に余計な質問を投げかける記者などいなくなることでしょう。

ストレートな言葉ではっきりと発した言葉がこれほどに強く、かっこいいなんて…
やはりボートレース界に松井 繫選手は絶対不可欠!

同世代の人々にこの発言が届けば、どれほど活力を与えることができるのだろう?と感じずにはいられませんでした。

松井 繁選手を応援する一人のファンとして、末永くその雄姿を私たちに見せてもらえることを強く望むとともに、これからもボートレース界の記録を更新し続けてもらえたら、それ以上のファンサービスはないと思っています。

松井繁V「75歳までやります。生涯で一番になりたい。結果より過程が大事」/びわこPG1

松井繁V「75歳までやります。生涯で一番になりたい。結果より過程が大事」/びわこPG1

[2023年1月15日18時20分]

トロフィーを手にする松井繁

<びわこボート:BBCトーナメント>◇PG1◇最終日◇15日

王者がP・G1初制覇で、史上4人目となるボートレース“全階級制覇”を達成! SG12冠、G1・58度Vの松井繁(53=大阪)が、誰も寄せ付けない圧倒的な逃げ切りでVを飾った。

   ◇   ◇   ◇

「75歳までやります。生涯で一番になりたいと思っている」。優勝会見で松井繁はこう話した。ボートレースの歴史において、誰が1番か? は比較するのが難しいテーマ。「結果より過程が大事だと思う」と話し、全力で努力し続けることでは、誰にも負けないという自負を感じさせた。また、松井といえば、SGグランプリの枠番抽選運が良くないことも周知の事実。今回の大会をきっかけに流れが変わるか!? 「全部、あみだにしてくれれば(笑い)」。順調にグランプリ出場となれば、抽選の結果からも目が離せない。

引用元:ボートレーサー・松井繁「もう一度賞金王になる。今はただそれだけです」 (msn.com)

ボートレーサー・松井繁「もう一度賞金王になる。今はただそれだけです」

公営競技の中でも最高ランク。ボートレースの絶対王者
“絶対王者”の異名を取る男がいる。それが、ボートレーサーの松井繁である。とにかく強い。ボートレースでは最高峰のSGからG1、他にも多くのランクのレースがあるが、いちいち彼の強さを紹介すると、キリがない。
で、みんながすぐに納得できる証拠を示そう。これまでの獲得賞金が40億円を超えるのである。なんと、競馬、競輪、オートレースの公営競技の中でも最高ランクの一人なのだ。

ボートレース ボートレーサー 松井繁© Tarzan 提供

最近、ボートレースでは有名俳優を配しCMを盛んに行っているし、東京・六本木から生中継を行ったりして勢いを感じる。
松井は現れるなり、「『ターザン』ってカラダ鍛えるヤツちゃうの。全然、鍛えてへんで、大丈夫か?」と、笑う。
日本最高のレーサー。勝つ理由があるのだ。それが知りたい。とりあえずボートレースの魅力について語ってもらった。
まず、この競技をまったく知らない一般的な人に知ってほしいのはスピード。それにモーター音の迫力ですね。テレビの画面で見ていても、そこはなかなか伝わらないですから。これを最初に現場で感じてほしい。
この競技を知るようになれば、もっと深いとこまで見ることがあるのですが、そこは順を追って説明できたらいいと思っているんですよ


公営競技の中で一番ドキドキするんじゃないかと思う

ボートレース ボートレーサー 松井繁© Tarzan 提供

最高時速は80kmにもなる。コーナーは1マーク、2マークが300mの距離に置かれ、それを3周して勝負を決する。1号艇から6号艇の全6艇で競う水上のレースなのである。
昔は1周1コーナーでトップに立つと、そのままゴールすることも多かった。でも、今はコーナーでの位置取り、立ち上がりによって着順の入れ替わりがあるし、それだけに勝負にはコクがある。
公営競技の中で一番ドキドキするんじゃないかと思いますね。ただね、僕らは公営競技としてやってきてますんで、スポーツ選手というより、プロの職人という感じでやってますね。スポーツと違って楽しいということは一切ないんで、職人ということはそういうことですね
モーターやプロペラの調整もレーサーに懸かっている。つまり、車のレースで言えば、メカニックとレーサーを一人で行うのだ。
ボートやモーターはレース場のモノが抽選で割り当てられる。もちろん、いいのも、悪いのもある。それを修正し、推進力の源泉であるプロペラを叩き、削り、好みに仕上げる。
完璧に調整できたことは何回かあるんですよ。でも、ボートもモーターも抽選ですから、それの頂点を見極めないといけない。やりすぎて逆に壊してしまう場合もある。だから、ここがこのモーターのマックスなのかなというのをわきまえて、調整していかないとダメなんですよね


「日本一のレーサーになりなさい」師匠の言葉が目標になった

ボートレース ボートレーサー 松井繁© Tarzan 提供

レーサーになるには養成所で1年訓練をする必要がある。もちろん、松井もこの道を辿った。募集人員に対して何十倍もの応募があり、かつ養成所を卒業できずに辞めていく人も少なくない。
その意味では、ここから戦いが始まっているといえよう。
訓練していたときに勝ったよろこびというのは自分の中にはありますが、本当のレースとなると、とんでもないレーサーがいますから全然違います。それでも、この世界で食べていけるというのはデビュー戦で思いました。
ただ、レーサーは師匠につくのですが、僕の師匠である金谷英男さんに“日本一のレーサーになりなさい”と言われた。日本一ってとてつもなくハードルも高いし、ごはん食べるだけの世界とは違うでしょ。

だから、今の自分があるのは、師匠に巡り合ったことがきっかけなんですよ
師匠の言葉が目標になった。それからは、ただ必死の一言。他のレーサーも必死だろうが、その度合いが違った。何といっても、本気で日本一を狙っていたからだ。
それは結果に表れる。デビュー半年でB1級、1年半でA級へと昇級するのである。そして、1995年に松井にとって、大きな転機が訪れることになる。
瞬間です。住之江のレースだったんですけど、その瞬間に賞金王になれると思いました。モンキーターンです。それまでの乗り方はボートに正座をしているような姿勢でターンをしていました。それを競馬のジョッキーが馬に乗っているような姿勢にしたんです。
ボートに乗っているのは足の裏だけ。こうすることで、水面とボートの接触している部分が半分ぐらいになる。
正座のときはボートがベタッと水についていましたから、抵抗がなくなってターンが速くなったし、小回りも利くようになった。ボートもよりコントロールできるようになりました
そこから快進撃が始まる。ボートレースで一番のレースであるグランプリに10年連続で出場を果たしたのだ。


実戦を繰り返すしかない。だから僕の仕事量は、他のレーサーより多い

ボートレース ボートレーサー 松井繁© Tarzan 提供

ただ、それだからといって、松井のボート人生は順風満帆だったかといえば、まったく違う。
膝の手術も2回しているし、骨折も何回かしています。普通のレーサーだったら2~3か月は休みますよ。ボートレースではフライングをするとだいたい30日休まないといけないんですが、僕はその期間に入った瞬間に手術をして30日経ったらいきなり出るわけです。賞金王を目指すためには絶対に休めないんですよ
フライングのペナルティーは厳しく、ときにはレーサー生命も左右するので、わざとやるレーサーはいない。
松井はフライングの回数は少ないので、その間でのケガとの闘いも苛烈だったろう。そして、加齢という問題も出てくる。松井は今年54歳。衰えはどう感じているのか。

体力は大丈夫、やる気もある。でも、動体視力とか判断力は確実に落ちてきているので、それをどういうふうに補うかは、実戦を繰り返すしかない。だから、仕事量としては他のレーサーよりめちゃくちゃ多いですよ。試運転してプロペラ叩いて、試運転してレース行って、また試運転してプロペラ叩く。
みんなトレーニングなんて恰好いいこと言うけど、僕は休憩させてって思う。家に帰ったら動くということすら嫌です
取材に伺った日の練習メニュー
ボートレース多摩川で開催されたウェイキーカップの模様を間近で取材。松井が語った通り「試運転して、プロペラを叩いて、レースに行って」というルーティーンをひたすら繰り返す。
この日は2回レースに出場したが、それ以外は他のレーサーとあまり話すこともなく、黙々と作業を続けた。勝負師の緊張感がこちらにも伝わってくるような時間だった。
次の目標は50億超えか? “75歳まで現役という記事を見ましたが”と問うと、松井の表情が少し曇った。
うっとうしいんですわ。常にいつ辞めるのとか聞いてくるから。自分が決めるからほっとけということで、質問されんように75歳だって。歳行ってるから、いつ辞めるのとかあまりにも失礼。
一生懸命やってるんですから。今はもう一回賞金王を狙っています。自ら全力を出して、必死でやって、それでももう賞金王になれないと自分で思ったら辞めます。ただ、それだけ。今はとにかくやっていくだけです
もちろん金のためにではない。自らの名誉のための賞金王だ。なんたってもう40億もある。「いや、税金払ったり、使ったりして40億はありませんよ」と、ニヤリと笑った。
引用元:ボートレーサー・松井繁「もう一度賞金王になる。今はただそれだけです」 (msn.com)

まとめ

公営ギャンブルであるボートレースには公平・公正が求められるうえ、それが大前提の業界であることは言うまでもありません。

CMの放映や選手による社会貢献活動などで健全性をPRしてきたからこそ、売り上げを伸ばし続けているボートレース業界。

選手にとっても、レースの結果に直結する“整備技術”は“操縦技術”と並ぶ重要な項目であることから、「セット交換」で足が良くなるのであれば、強い選手ほど手間と時間を惜しむことなく整備を施すでしょう。

そんな状況下において、ボートレース界の流れに“待った!”をかけることとなった松井 繁選手の苦言。
競艇界を長年けん引し、見続けてきた重鎮が投じた一石に、多くの後輩選手や業界関係者が「セット交換の必要性と公平性、そして本来の用途」について一度立ち止まって考える機会を与えられたのではないでしょうか。

2024年6月に尼崎競艇場で開催された直前のグランドチャンピオン。
そこで物議を醸した「セット交換」が、今回のオーシャンカップでは限定的に禁止されることになりました。
このことにより、今大会の結果次第では「セット交換」がどれだけレースの結果に影響を及ぼしていたのかが浮き彫りになりそうです。

「セット交換」については、以前から選手や関係者の間でも賛否両論があり、直近のグランドチャンピオンで起きたような異常事態が引き金となって大きな問題に発展しました。
公平にレースを進めるためにも、公平性を保つためにも、そして競艇ファンが不信感を抱かずに楽しめるように配慮してほしいと願うばかりです。

この記事内でご紹介した追加の整備規定は、2024年開催のオーシャンカップに限った内容ですが、現在もセット交換について業界内外で議論されている事実がある以上、近い将来には全ての競艇場で「セット交換禁止」が採用される事態に発展する可能性も大いにあります

今後の日本モーターボート競走会、ならびにボートレーサーの動向と世論の声から目が離せません。

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