2024年11月5日、不祥事が発覚し続けている「日本モーターボート競走会」に対して、2023年10月に監督官庁である国土交通省の担当者が“全レース停止”を意味する業務停止の可能性を伝えていたことがわかりました。
この事実を受けて、日本モーターボート競走会は『(発言の)指摘を真摯(しんし)に受け止め、検査業務の改善に取り組んでいる』と発言していますが、現在までに目立った改善は認められず、SNSでは「経営陣、幹部全員クビにした方が良い」「自民党と同じく腐敗した環境は排除しないとまずい」といった辛辣な意見のほか、「お灸を据える意味でも一度全レース停止はあり」という肯定的な意見も聞かれるなど、その波紋は広がり続けています。
さらに2024年10月17日には江戸川競艇場で建物火災が発生しており、幸いこの火災による逃げ遅れや、けが人もいなかったものの、出火の原因が『関係者が携行缶にガソリンを給油中に引火』とされているため、危険物の管理体制に問題があったのではないかとの疑念を持たれており、これも場合によっては日本モーターボート競走会にとって大きな痛手となり得る危機的状況。
しかも、火災発生から約1か月近く経過する現在も修繕工事のために江戸川競艇場が開場できていないのは、ボートレース界にとっても大きな損出でしょう。
ここでは、今回の伝達の概要と「全レース停止」の可能性、度重なる不祥事について解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
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「全レース停止」騒動の発端と詳細
「全レース停止」騒動の発端は2024年11月5日に東京新聞の社会面で報じられた記事です。
記事の概要としては、『ボートレース界で不祥事が相次いだことを受け、監督官庁の国土交通省の担当者が1年前の2023年10月に競艇事業を統括する「日本モーターボート競走会」に、全レース停止を意味する業務停止の可能性を伝えていた。』というもの。
詳細については、東京新聞に掲載されていましたので以下抜粋します。
国交省モーターボート競走監督室の竹内和弘室長は昨年10月、競走会幹部に、不正防止のための選手への検査が不十分だと指摘。
「職員の業務怠慢による不正行為が行われれば、競走実施業務は是正が確認されるまで、組織として行えない可能性がある」と発言した。引用元:競艇「全レース停止」の可能性、日本モーターボート競走会に監督官庁が伝達 不祥事連発「不正防止が不十分」:東京新聞 TOKYO Web
競走会はレースで使うボートやモーター、審判員の登録、選手のあっせんなど競艇事業を統括し、業務停止は全国24レース場で開催停止になることを意味する。監督官庁の責任者の発言は文書にまとめられ、競走会で共有された。競走会関係者は「重い発言だ。全場停止となれば、選手への補償など巨額の損失も出る」と、危機感とともに振り返る。
引用元:競艇「全レース停止」の可能性、日本モーターボート競走会に監督官庁が伝達 不祥事連発「不正防止が不十分」:東京新聞 TOKYO Web
現時点では、まだ日本モーターボート競走会は決定事項ではなく、あくまで可能性という段階ですが、このまま日本モーターボート競走会の運営体制に改善が見られない場合には、これは現実になり得る状況と受け取ることもできます。
これは日本モーターボート競走会が競艇事業を統括する組織として「首の皮一枚で繋がっている」という現実を突きつけられたということ。
もはや見て見ぬふりも隠蔽もできない、重要かつ早急に対応して結果を出さねばならない正念場。
もし「全レース停止」なんてことになれば、年間2兆円を超える売上額を誇る巨大なボートレース業界ですから、その被害額・損失額が巨額になるのは必至でしょう。
2023年の「業務停止」発言の真意を問う東京新聞の取材に、国土交通省の担当者は次のように回答しています。
業界にはさまざまな問題があると認識している。コンプライアンス(法令順守)などが進まなければ、業務停止をするという思いはある。
(発言の)指摘を真摯(しんし)に受け止め、検査業務の改善に取り組んでいる
選手への補償問題だけでなく、この業界で働く関係各所に多大なる影響と損失を招く緊急事態だということを日本モーターボート競走会は認識すべきであり、危機感をもって早急に対応しなければならない最重要案件であることを肝に銘じてほしいですね。
競艇「全レース停止」の可能性、日本モーターボート競走会に監督官庁が伝達 不祥事連発「不正防止が不十分」
競艇「全レース停止」の可能性、日本モーターボート競走会に監督官庁が伝達 不祥事連発「不正防止が不十分」
2024年11月4日 06時00分
ボートレース界で不祥事が相次いだことを受け、監督官庁の国土交通省の担当者が昨年10月、競艇事業を統括する「日本モーターボート競走会」に、全レース停止を意味する業務停止の可能性を伝えていた。その後も、職員らの違法な舟券購入が発覚。改善が進まない現状に、専門家からは国の指導の甘さを指摘する声も上がる。(宮畑譲)
◆八百長、給付金の不適切受給、予想屋と金銭やりとり…ボートレースを巡っては、2020年に八百長事件で選手が摘発された後も、2021年に200人以上の選手が新型コロナウイルス対策の持続化給付金を不適切受給していたことが発覚。2022年にもトップ選手と予想屋との金銭のやりとりが明らかになった。
国交省モーターボート競走監督室の竹内和弘室長は昨年10月、競走会幹部に、不正防止のための選手への検査が不十分だと指摘。「職員の業務怠慢による不正行為が行われれば、競走実施業務は是正が確認されるまで、組織として行えない可能性がある」と発言した。
◆今夏は違法な舟券購入で職員20人超が諭旨解雇
競走会はレースで使うボートやモーター、審判員の登録、選手のあっせんなど競艇事業を統括し、業務停止は全国24レース場で開催停止になることを意味する。監督官庁の責任者の発言は文書にまとめられ、競走会で共有された。競走会関係者は「重い発言だ。全場停止となれば、選手への補償など巨額の損失も出る」と、危機感とともに振り返る。
だが、今年夏もボートレース江戸川(江戸川競艇場、東京都江戸川区)などで、職員が法で禁じられている舟券を購入していた問題が発覚し、20人超が諭旨解雇された。国交省は「組織的ではない」との理由で、法令順守を求める文書の指導にとどめた。
◆識者「不祥事が続くのは、組織の倫理観が低下しているから」
昨年の「業務停止」発言の真意を問う東京新聞の取材に、国交省の監督室は「業界にはさまざまな問題があると認識している。コンプライアンス(法令順守)などが進まなければ、業務停止をするという思いはある」と回答。競走会は「(発言の)指摘を真摯(しんし)に受け止め、検査業務の改善に取り組んでいる」とする。
企業統治に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は「競走会には、公営ギャンブルを特権的に運営しているという意識が感じられない。不祥事が続くのは、組織の倫理観が低下しているから。国交省も信頼性が担保されるまで厳しく指導する必要がある。本気度が感じられない」と指摘した。ボートレースとは…
1952年に長崎県大村市で始まった公営ギャンブル。創設には公益財団法人「日本財団」の初代会長・故笹川良一氏が尽力した。現在、日本と韓国で開催されている。レースの主催者は地方自治体で、経費や委託料などを除く売り上げは、各自治体の会計予算に組み入れられている。一部は日本財団にも交付され、公益事業への助成金の原資となっている。引用元:競艇「全レース停止」の可能性、日本モーターボート競走会に監督官庁が伝達 不祥事連発「不正防止が不十分」:東京新聞 TOKYO Web
「全レース停止」に対するSNSの反応
2023年10月に監督官庁である国土交通省の担当者が「日本モーターボート競走会」に対して、“全レース停止”を意味する業務停止の可能性を伝えていたことをうけて、ボートレースファンからはどのような反応があったのでしょう。
『一回全部吹き飛んだ方がいいレベル』『経営陣、幹部全員クビにした方が良い』『自民党と同じく腐敗した環境は排除しないとまずい』という厳しい言葉が投稿されたところを見ると、ファンがどれだけ日本モーターボート競走会の運営体制に疑問や不信感を抱いていたのかが伝わってきます。
また『生き甲斐なくなるやん』『真っ当に勝負してる人からしたらやりきれないよね』という声にボートレースファンの率直な気持ちが反映されているように感じました。
投稿されていた反応の一部を抜粋してご紹介します。
いや、ほんとにここ数年酷過ぎるからボートレース好きだけど一回全部吹き飛んだ方がいいレベル
— 深見興子@相互フォロー歓迎 (@sougoakauntokun) November 4, 2024
競艇「全レース停止」の可能性、日本モーターボート競走会に監督官庁が伝達 不祥事連発「不正防止が不十分」https://t.co/eWtYDkZuFS
あーーこれあかんやつ。
— 鳥島烏 フォロバ100 (@torishimaka) November 4, 2024
競艇の全レース停止になるかもしれない。
八百長とかも色々噂されてるから、自民党と同じく腐敗した環境は排除しないとまずいですね。pic.twitter.com/HfKiUubtcX
競艇「全レース停止」の可能性、日本モーターボート競走会に監督官庁が伝達 不祥事連発「不正防止が不十分」
— マイン クアン (@LunWaifu089089) November 4, 2024
笹川だけの既得権益にするからダメなんだよ。新規参入促して競争原理働かせないと
生き甲斐なくなるやん😳ボートレース協会早く汚職なくなれ🥺 pic.twitter.com/POVDxYdcB3
競艇「全レース停止」の可能性、日本モーターボート競走会に監督官庁が伝達 不祥事連発「不正防止が不十分」
— うさぎプロレス🐰 (@SIaxAJXBRivekPD) November 4, 2024
2020年の八百長に始まり、ほぼ毎年不祥事起こして
2024年は3回も不祥事起こしてんじゃん
経営陣、幹部全員クビにした方が良い pic.twitter.com/LUYqSTOhyY
特に気になったのは次の投稿です。
私からは敢えて触れませんが…長い物には巻かれろの精神ってどこにでもありますよね。
「不祥事つづきの競艇に、国交省が全レース停止を指示する可能性を伝えた」……これ「結構なニュース」なのにさ、「報じてるのはまだ東京新聞だけ」なんだよ。これ「日本財団の凄まじい影響力をあらわしてる」とおもう。「どのメディアもなぜか日本財団に忖度」してる。東京新聞はなんなんだろうな……
— ほしみブログ (@hoshimi12_BROG) November 4, 2024
日本モーターボート競走会はこの1年何をしてきたのか?
2023年10月に監督官庁である国土交通省の担当者から“全レース停止”を意味する業務停止の可能性を伝えられていた日本モーターボート競走会。
この通達を受けてから丸一年が経過していますが、改善の様子どころか、叩けば叩くほどホコリ(=不祥事)が出る始末。
内部調査で舟券購入をしていた職員を大勢“諭旨解雇”したことで、ボートレース界の膿を出し切ったと言えるのでしょうか?
あくまで私の個人的な解釈ですが、これまでに発覚している不祥事はまだほんの一握りでしかないように感じるのです。
通達を受け取る前と後でも、表立って日本モーターボート競走会にこれといった変化はないように感じます。
強いて言うなら、2024年6月4日に日本モーターボート競走会が元職員の違法な舟券購入を受けて「当会江戸川支部元特別嘱託の競走法違反(舟券の購入)について」という公式声明を発表したことくらいでしょうか。
この公式声明の詳しい内容などについては後述しますが、「隠蔽体質」を厳しく指摘されている日本モーターボート競走会が表立って文書を公表したのは、これまでと変わっていこうとする小さな一歩だと考えることができるでしょう。
日本モーターボート競走会が重点的に強化すると訴えていること
前述したほかにも、しっかりと組織として改善していこうとする姿勢を一般に公開したものがありました。
それは、日本モーターボート競走会の公式サイト内に掲載されていた2024年4月1日~2025年3月31日までの『令和6年度事業計画』です。
この事業計画のなかに、これまでの不祥事や国土交通省からの指摘を反映した文言を見つけたのでご紹介します。
競走実施機関として指定されている本会には、公正かつ安全なボートレースの実施が求められており、令和6年度の事業についても、「審判及び検査等の競技
関係事務」、「選手、ボート及びモーター、審判員並びに検査員の登録」、「選手の出場のあっせん」、「選手、審判員及び検査員の養成及び訓練」等の競走実施業務を適切かつ確実に実施する。
この競走実施業務においては、競走の公正を害する行為が再び起きないよう、選手の管理・検査体制の強化等による再発防止対策を引き続き徹底して実施する。さらに、選手のモラル向上を図るためモラル・コンプライアンス教育を強化する。
1.競技関係事務
(1)選手、ボート及びモーターの検査に関する事務
モーターボート競走法第33条第1号に基づき、選手、ボート及びモーターの検
査を行う。選手に対する検査は、身体上の支障の有無及び体重等の測定を行い、
ボート及びモーターに対する検査は、「ボート及びモーター登録規格」に規定する要件及び構造上の欠陥の有無等の確認を有資格者である検査員が行う。
また、選手の私物検査時に金属探知機を活用するとともに、選手宿舎の備品の充
実を図り、選手の持ち込み私物を削減させることで、私物検査の厳格化及び効率化を図る。さらに、選手の管理期間中の監視体制を充実させ、競走における不正行為の再発防止を図ることにより公正な競走運営を確保する。
(2)選手、審判員及び検査員の訓練
(ア)選手定期訓練
モーターボート競走法第33条第4号に基づき、業務指導及び選手の資質向上を図るための講義等を実施する。
特に、モラル・コンプライアンスに関する事項については、重点的に行う。
(イ)新人選手定期・臨時訓練
モーターボート競走法第33条第4号に基づき、登録2年未満の選手及び登録
5年未満の低勝率の選手を対象にモラル・コンプライアンス教育をはじめ、操縦・整備技量の向上を図るため、実技指導選手を招聘し、模擬レース主体の実技訓練を実施する。
事業計画の中で特に重きを置いていたのは「選手の管理・検査体制の強化」と「選手のモラル向上を図るためモラル・コンプライアンス教育を強化する」という点でした。
その証拠にこれらの文章中には“再び起きないよう”“再発防止対策”“再発防止”という文言が何度も使われており、これは2023年10月に国土交通省の担当者から通達された内容を踏まえて作成されたものだと考えられるのです。
発表された声明の内容
2021年4月28日に元職員の違法な舟券購入の一報が報じられてから1か月後の2024年6月4日。
ついに日本モーターボート競走会が「当会江戸川支部元特別嘱託の競走法違反(舟券の購入)について」という公式声明を発表しました。
発表された声明の内容を原文のままご紹介します。
当会江戸川支部元特別嘱託の競走法違反(舟券の購入)について
本年5月、当会江戸川支部の元特別嘱託が、在職期間中に禁止されている舟券を購入していたことから、モーターボート競走法違反(同法第11条2号の舟券の購入禁止)により、警視庁小松川警察署から書類送検されております。
競走実施機関である当会は、自らの監督不行き届きにより、事業の根幹となる法令に対する違反行為があったことをお知らせするとともに、本件を厳粛に受け止め、これまで以上に役職員に対するコンプライアンス教育を徹底いたします。
今後は、管理体制の強化を図るなど、再発防止に努めてまいります。
なお、元特別嘱託は、昨年10月に依願退職しておりますが、当時の職場における監督上の責任については、昨日、当会の規則に基づき、譴責処分を行っております。
引用元:日本モーターボート競走会文書
度重なる不祥事の数々…
2020年以降、ボートレース界における不祥事の発覚は毎年の恒例行事になりつつあります。
選手をはじめ職員は、ボートレースという公営ギャンブルを職業に選んだ以上は“不正が疑われる行為から距離を取るべき”と重々理解しているはずなのに、なぜ不祥事は相次ぐのでしょうか?
2020年代に報道された不祥事の一部をご紹介します。
※2020年に発覚した八百長事件については、後述で詳しくご説明します。
東京新聞の記事で挙げられている近年におけるボートレース界の不祥事
— 今日が終わりの始まりの日 (@__blind_side) November 4, 2024
2020
西川昌希八百長事件
2021
選手216名の新型コロナ持続化給付金不適切受給
2022
峰竜太が野良の予想屋からゲーム大会の協賛金を貰って出場停止
2024
佐々木海成舟券購入事件
江戸川職員舟券購入事件
舟券購入職員22名の解雇 https://t.co/MxMudXJ5iT
【2021年】新型コロナウイルス対策の持続化給付金を不正受給
2021年には216人の選手が新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金を不適切に受給していたことが発覚。
不正受給が発覚した全員が処分を受けるという衝撃的な事案が発生し、競艇界を揺るがす大問題へと発展しました。
コロナ給付金不正受給とは?
コロナ給付金というのは、コロナウイルス感染症で仕事ができなかったり、収入が著しく低下してしまった人達に対して支払われるお金ですが、虚偽の申請をして、お金を受け取るというニュースが数多く聞かれたことを重く見た国が総力を挙げて摘発に動く事態となりました。
競艇界では2021年3月からの国土交通省から調査が行われ、コロナ給付金制度について理解しないまま、何の関係もない収入の減少(フライング休みなど)を申請して、給付金を受け取る事案が多く発生していたことが判明。
不正に受給したコロナ給付金については、全員が全額返還することになりましたが、総額2億1,473万円もの巨額の不正。
競艇選手はフライングなどの違反を犯すと出場停止となるが、そうしたペナルティーによる減収期間を悪用していたケースもあったため、この案件はとても悪質な事案だったといえます。
不正受給の実態
調査の結果、最終的には215名もの選手が2億1,473万円もの金額を不正受給していた事実が発覚しました。
後に全員が返還したものの、コロナ禍においてもボートレースの開催日数は減少していないうえ、
ボートレーサーの全体人数は1,600人ですので、割合にして約12.5%。
10人に1人以上の選手が不正受給を行っていたことがわかります。
申請理由 | 人数 |
---|---|
フライングまたは出遅れによる申請 | 24名 |
私傷病および公傷等による申請 | 43名 |
感染者や農耕接触者等に指定され、あるいは開催中止や打ち切りとなり、 出場斡旋に影響を受けたことによる申請 | 67名 |
感染症拡大予防等のため、競走不参加、前検不合格、途中帰郷となったことによる申請 | 68名 |
ボートレース以外の事業収入等による申請 | 13名 |
上記の申請理由で特に注目すべきは「フライングや出遅れによる受給」です。
フライングをすると一定期間斡旋を受けられないのは、ボートレースであれば当然すぎるほどの常識。
にもかかわらず、新型コロナウイルスの影響で収入が減ったと偽り、100万円もの給付金を受け取っていたのです。
世の中にはコロナの影響でお店を占めざるを得なくなる経営者や、職を失った人が大勢いて、生活に困窮する人々を救うための給付金に虚偽の申請をしてお金を得るなんてモラルに反する行為が許されるはずがありません。
不正受給自体が許すべきことでないのは至極当然ですが、ただでさえ高収入のボートレーサーが受給を考えること自体おかしなことなのです。
日本モーターボート競走会が下した処分
このような由々しき状況を受けて、日本モーターボート競走会がコロナ給付金の不正受給対象者に下した処分は次のとおりです。
- 新型コロナウイルスの影響がない「フライング又は出遅れによる」理由で、選手会による注意喚起以降に受給していた選手:出場停止4ヶ月(11名)
- 新型コロナウイルス感染症の影響がない「フライング又は出遅れによる」理由で、選手会による注意喚起以前に受給していた選手:出場停止3ヶ月(13名)
- 新型コロナウイルス感染症の影響がない「私傷病及び公傷等による」理由で、選手会による注意喚起以降に受給していた選手:出場停止2ヶ月(19名)
- 新型コロナウイルス感染症の影響がない「私傷病及び公傷等による」理由で、選手会による注意喚起以前に受給していた選手:出場停止1ヶ月(24名)
- 新型コロナウイルス感染症の影響があり、「感染者や濃厚接触者等に指定され、或いは開催中止や打ち切りとなり、出場あっせんに影響を受けたことによる」、「感染症拡大予防等のため、競走不参加、前検不合格、途中帰郷となったことによる」、「ボートレース以外の事業収入等による」という理由で受給していた選手:戒告(148名)
このほか、特に重要視されたのは2020年の日本モーターボート選手会からの注意喚起以前におこなっていたか、あるいは注意喚起以降に行っていたかの判断基準と申請の理由でした。
不正受給といえば詐欺罪で起訴される可能性があるにもかかわらず、出場停止処分だけで済ませたことで、厳しい声が多数寄せられた悪質な不祥事として、ボートレースファンだけでなく多くの国民の記憶に残った負の遺産です。
発表された謝罪文の内容
2021年4月28日、BOAT RACE公式サイトに「ボートレーサーの持続化給付金受給に関する調査結果報告について」というピックアップニュースが掲載され、その中で日本モーターボート競走会の前会長・潮田 政明氏と当時の日本モーターボート選手会会長・上瀧 和則氏(2024年8月引退)が次のように謝罪の言葉を寄せていました。
日本モーターボート競走会と日本モーターボート選手会は、令和3年3月30日の記者会見以降、改めて、持続化給付金を受給したとされる全選手を対象に、事実確認を行ってまいりました。
選手の、持続化給付金制度の趣旨・目的への理解不足が理由であったことが要因とはいえ、「不正に繋がりかねない行為」であり、「公営競技の選手として、競走の公正・健全な運営を脅かすもの」と考えます。選手が、給付金を申請・受給していたことは、誠に遺憾なことであり、お客さまをはじめ、多くの方々の信頼を裏切ることとなり、心より深くお詫び申し上げます。
なお、今回給付金を受給した全選手は、既に給付金を返還済若しくは返還手続中となっておりますが、業界内の審査機関である褒賞懲戒審議会におきまして、当該選手を出場停止処分とするなど、厳正・厳重に対処いたしました。
再びこのようなことを起こさぬよう、全選手を対象に、訓練・個人面談等による選手指導の強化を図るとともに、内部通報制度を活用した情報収集の充実化や厳格な処分等の再発防止策に取り組むことにより、お客さまの信頼確保に鋭意努めてまいります。
一般財団法人日本モーターボート競走会
会長 潮田 政明
選手の持続化給付金の受給に関しまして、選手を代表し、心よりお詫び申し上げます。
今後、このようなことがないよう、改めて選手全員に対し、厳しく指導を行っていくとともに、選手として、お客さまに魅力あるレースを提供し、信頼の回復に努めてまいります。
公益社団法人日本モーターボート選手会
会長 上瀧 和則
ボートレーサーの持続化給付金受給に関する調査結果報告について
ボートレーサーの持続化給付金受給に関する調査結果報告について
2021/04/28
日本モーターボート競走会と日本モーターボート選手会は、令和3年3月30日の記者会見以降、受給した全選手を対象に、申請理由や申請時期、受給等についてのヒアリングを実施するとともに、ヒアリング結果を精査し、全容の解明に努めてまいりました。
このたび、精査結果が取りまとまりましたので、ご報告いたします。
また、再発防止策及び当該選手に対する処分につきまして、併せてお知らせいたします。
1.報告内容
(1)調査方法
[1]調査(3月10日~24日)
選手会が、全会員(1,574名)を対象に、持続化給付金受給の有無に関する記名式の調査を実施し、受給者211名が判明。
[2]精査(3月31日~4月12日)
競走会と選手会が、受給者211名を対象に、申請理由、受給金額、返還の有無及び税理士への相談等について聴取及び精査を実施。
※精査期間中に、新たに4名の選手が受給を申告。
(2)受給者数 215名
(3)受給総額 2億1,473万円
(4)返還者数 215名(手続中含む)
(5)返還総額 2億1,473万円
(6)受給申請時期 令和2年5月1日~令和3年2月15日
(7)受給申請理由
[1]フライング又は出遅れによる 24名
[2]私傷病及び公傷等による 43名
[3]感染者や濃厚接触者等に指定され、或いは開催中止や打ち切りとなり、出場あっせんに影響を受けたことによる 67名
[4]感染症拡大予防等のため、競走不参加、前検不合格、途中帰郷となったことによる 68名
[5]ボートレース以外の事業収入等による 13名
(8)受給者の属性
[1]級別(A1級43名、A2級39名、B1級110名、B2級23名)
[2]性別(男子200名、女子15名)
[3]年代別(20代46名、30代94名、40代50名、50代23名、60代2名)
2.受給した選手の処分
持続化給付金の制度は、事業の持続が困難な事業主に対する制度であり、ボートレース業界は、コロナ禍においても、開催日数は減少していない。
また、参加レースが、中止や打ち切りとなった選手に対しては、追加あっせん等の補填を行っており、競走に関する収入減は、極めて限定的である。
選手が、持続化給付金を受給することは、制度の趣旨・目的に合致せず、モラルに反するだけではなく、「不正に繋がりかねない行為」であり、「公営競技の選手として、競走の公正・健全な運営を脅かすもの」である。
よって、業界として、厳正に処分する必要があることから、受給した選手については、申請理由等を勘案し、褒賞懲戒規程第11条第5号「選手としての体面を汚し又は著しく風紀を乱したとき」に該当するとして、褒賞懲戒審議会(令和3年4月27日開催)に諮問し、次のとおり処分を決定した。
(1)新型コロナウイルス感染症の影響が無い「フライング又は出遅れによる」理由で、選手会による注意喚起以降に受給していた、11名:「出場停止4ヶ月」
(2)新型コロナウイルス感染症の影響が無い「フライング又は出遅れによる」理由で、選手会による注意喚起以前に受給していた、13名:「出場停止3ヶ月」
(3)新型コロナウイルス感染症の影響が無い「私傷病及び公傷等による」理由で、選手会による注意喚起以降に受給していた、19名:「出場停止2ヶ月」
(4)新型コロナウイルス感染症の影響が無い「私傷病及び公傷等による」理由で、選手会による注意喚起以前に受給していた、24名:「出場停止1ヶ月」
(5)新型コロナウイルス感染症の影響が有り、「感染者や濃厚接触者等に指定され、或いは開催中止や打ち切りとなり、出場あっせんに影響を受けたことによる」、「感染症拡大予防等のため、競走不参加、前検不合格、途中帰郷となったことによる」、「ボートレース以外の事業収入等による」という理由で受給していた、148名:「戒告」
3.再発防止策
(1)訓練・研修会等による指導強化
[1]競走会
ア.定期訓練において、専門講師及び競走会業務部による、モラル、コンプライアンスに関する講話を実施し、倫理規程等の法令順守を徹底する。
イ.理事及び執行役員による個人面談を実施し、モラル、コンプライアンスの徹底を図る。
[2]選手会
ア.新人選手訓練において、選手会業務部及び競走会業務部による、モラル、コンプライアンスに関する講話を実施し、倫理規程等の法令順守を徹底する。
(2)内部通報制度の活用
ふれあいフリーダイヤルや、メールによる専用相談窓口を活用し、選手、関係者から情報を収集し、競走関係以外のモラル、コンプライアンスに反する事案にも対処する。
(3)不正行為に関する検証委員会の活用
異常投票や疑いのあるレース映像の検証のみならず、競走の公正確保を害する恐れのある事案以外の、モラル、コンプライアンスに反する事案に対しても、委員会において検証を行う。
(4)業務連絡会の設置
[1]競走会、選手会連絡会
競走会、選手会による「業務連絡会」を設置し、定期的な開催により、競走運営に関する諸問題について情報交換と情報共有を図り、検証委員会と連携し、危機管理の徹底と競走の公正の確保に努める。
[2]関係団体連絡会
競走会、選手会、全施協、振興会、保安協会の5団体による「業務連絡会」を設置し、競走運営に関する諸問題について情報交換と情報共有を図る。
(5)褒賞懲戒審議会による厳格な処分
褒賞懲戒審議会における処分の運用を、更に厳しいものとすることにより懲戒事案に対する抑止力を高め、競走の公正の確保に努める。
日本モーターボート競走会と日本モーターボート選手会は、令和3年3月30日の記者会見以降、改めて、持続化給付金を受給したとされる全選手を対象に、事実確認を行ってまいりました。
選手の、持続化給付金制度の趣旨・目的への理解不足が理由であったことが要因とはいえ、「不正に繋がりかねない行為」であり、「公営競技の選手として、競走の公正・健全な運営を脅かすもの」と考えます。選手が、給付金を申請・受給していたことは、誠に遺憾なことであり、お客さまをはじめ、多くの方々の信頼を裏切ることとなり、心より深くお詫び申し上げます。
なお、今回給付金を受給した全選手は、既に給付金を返還済若しくは返還手続中となっておりますが、業界内の審査機関である褒賞懲戒審議会におきまして、当該選手を出場停止処分とするなど、厳正・厳重に対処いたしました。
再びこのようなことを起こさぬよう、全選手を対象に、訓練・個人面談等による選手指導の強化を図るとともに、内部通報制度を活用した情報収集の充実化や厳格な処分等の再発防止策に取り組むことにより、お客さまの信頼確保に鋭意努めてまいります。
一般財団法人日本モーターボート競走会
会長 潮田 政明
選手の持続化給付金の受給に関しまして、選手を代表し、心よりお詫び申し上げます。
今後、このようなことがないよう、改めて選手全員に対し、厳しく指導を行っていくとともに、選手として、お客さまに魅力あるレースを提供し、信頼の回復に努めてまいります。
公益社団法人日本モーターボート選手会
会長 上瀧 和則
4.記者会見の質疑応答
- 共同通信社
- サンケイスポーツ
- 報知新聞社
- テレビ朝日
- 読売新聞社
- TBS
- 朝日新聞社
- 公営レーシングプレス
- デイリースポーツ
- 共同通信社
- 読売新聞社
- 産経新聞社
4月28日記者会見出席社19社20名
テレビ朝日 1名
TBS 1名
時事通信社 1名
共同通信社 2名
読売新聞社 1名
産経新聞社 1名
朝日新聞社 1名
報知新聞社 1名
スポーツニッポン 1名
日刊スポーツ 1名
サンケイスポーツ 1名
デイリースポーツ 1名
東京スポーツ 1名
西日本スポーツ 1名
タイムス出版社 1名
マクール 1名
ボートボーイ 1名
マンスリー 1名
公営レーシングプレス 1名
【2022年】トップ選手がネット上で予想業者と接触
さらに、2022年にはトップ選手がネット上で予想業者と接触を持ったとして処分を受けました。
その選手の名前は「峰 竜太」選手。
現在のボートレース界で最強との呼び声高く、SGグレードのレースでも第一線で活躍している選手です。
2022年2月26日から4か月間の出場停止処分を受けた峰 竜太選手は、SNSに掲載した謝罪文で次のように記しています。
『僕自身に足りないものは技術や努力などではなく、プロとしての自覚だということに気がつきました。』
峰 竜太選手は2021年まで7年連続最高勝率を記録し、2018年と2020年には賞金王を獲得。
競艇界においては、名実ともに現役トップ選手といえる存在です。
ボートレース予想屋との金銭授受の実態
峰 竜太選手は、自身が主催するインターネット上の個人的なゲームイベントにおいて、SNSで協賛を募った際、本来は交流を避けなければならない、ボートレースの予想を生業とする人間(予想業)とネット上で接触し、協賛金という名目で金銭のやりとりをするなど、自身のルールに対する理解不足により、ボートレースの信頼を失墜させてしまいました。
協賛金については、すぐに返金したといいますが、公営ギャンブルの選手が利害関係者から金銭を受け取るのはご法度。
艇界きってのスター選手の不祥事で業界に衝撃が走ったことは言うまでもありません。
日本モーターボート競走会が下した処分
このような競艇界を代表するスター選手の起こした不祥事を受けて、日本モーターボート競走会は早急に褒賞懲戒審議会を設置。
そして審議の結果、峰竜太選手に対して4か月間の出場停止処分を科すことを決定しました。
褒賞懲戒審議会とは?
峰 竜太選手に4か月の出場停止処分を下すことを決めた“褒賞懲戒審議会”とはどのようなものなのでしょうか?
日刊スポーツの記事に概要が記されていましたので、ご紹介します。
褒賞懲戒審議会とは、日本モーターボート競走会が選手・審判員及び検査員の褒賞及び懲戒について審議する会。
引用元:最強ボートレーサー峰竜太が褒賞懲戒審議会で4カ月出場停止 SGは来年8月メモリアルまで不可 – ボート : 日刊スポーツ (nikkansports.com)
競走会に審議会を設置し、10人以内の委員で組織される。
選手の懲戒については、それぞれの事案に対して戒告か、一定期間の出場停止処分を課すことができる。
峰 竜太選手とは?
名前 (フリガナ) | 峰 竜太 (ミネ リュウタ |
登録番号 | 4320 |
生年月日 | 1985年3月30日 |
身長 | 173cm |
体重 | 51㎏ |
血液型 | B型 |
支部 | 佐賀 |
出身地 | 佐賀県 |
登録期 | 95期 |
級別 | A1級 |
デビュー日 | 2004年11月10日 |
峰 竜太選手は競艇ファンなら必ず知っているといっても過言ではない、いろいろな意味で“超”がつくほど有名な日本のトップボートレーサー。
毎年、高額賞金を獲得している一方で、勝っても負けても涙を流す感情の豊かさから「泣き虫王子」という異名を持つほど。
2024年5月21日~26日まで多摩川競艇場で開催された「SG・第51回ボートレースオールスター」では、22,497票を獲得してファン投票1位で選出され、なんと2位の池田浩二選手の17,043票に5,000票以上の差をつけて、3年ぶり14回目の出場で圧倒的な人気を見せつけました。
峰 竜太選手は、2004年11月10日に地元・唐津競艇場で開催された「一般・西日本スポーツ杯争奪戦」でデビューを飾ると、新人ながら2着と舟券に絡む活躍を見せ、2004年12月30日には4号艇・6コースからまくりを決めてデビュー22走目にして初勝利をあげました。
さらに、デビューから1年も経たない2005年11月6日に唐津競艇場の一般戦で1号艇・5コースからまくりを決めて初優勝を果たすと、2006年には最優秀新人選手に選出、2007年5月29日にはデビューから2年目にして若干22歳の若さで「第34回 笹川賞競走(ボートレースオールスター)」でSG初出場を果たす快挙。
そして、2017年7月17日にまるがめ競艇場で開催された「第22回 オーシャンカップ」でSG初優勝、2022年6月30日には通算1,500勝の金字塔を打ち立てました。
さらに、数々のタイトルホルダーでもあり、現在“GRANDE5”のメダルを3つ獲得し、石野 孝之選手・毒島 誠選手と並ぶ1位タイ。
しかも、2017年開催の「SG・第44回 ボートレースオールスター」のファン投票で16,238票を獲得し、第1位で選出され、2019年5月26日には“ゴールデンレーサー賞”を受賞するなど、人気も実力も抜きんでた存在として競艇界をけん引している選手でした。
しかし残念ながら、絶大な人気の裏でいろいろな不祥事や疑惑があり、たくさんのファンを抱える反面、アンチが多い選手でもあるのです。
また、峰 竜太選手は2025年度前期のA1級選手勝率1位に輝いており、さらに直近の2024年5月21日~26日に多摩川競艇場で開催された「SG・第51回ボートレースオールスター」で優勝した定松 勇樹選手(5121)や、2024年8月からの長期欠場に関する憶測が飛び交っている野田 なづき選手(5118)も「峰グループ(正式名称:LAGOON BASE・ラグーンベース)」の大黒柱として君臨しています。
峰 竜太選手がこれまでに獲得したタイトルは次のとおりです。
まさに“ボートレース界ナンバーワンのスター”の称号にふさわしい活躍ですね。
<峰竜太選手の主要獲得タイトル>
- ゴールデンレーサー賞(2019年)
- 史上27人目の24場制覇(2023年)
- 最優秀選手(2018年・2020年)
- 最多獲得賞金選手(2018年・2020年)
- 最高勝率選手(2015年・2016年・2017年・2018年・2019年・2020年・2021年・2023年)
- 最多勝利選手(2015年・2020年)
- 記者大賞(2018年・2020年)
- 最優秀新人選手(2006年)
- オーシャンカップ(2017年・2020年)
- グランプリ(2018年・2020年)
- ボートレースオールスター(2021年)
- ボートレースダービー(2023年)
峰 竜太選手の活躍の裏で見え隠れするボートレース界の忖度⁉
前述の不祥事の影響により、峰 竜太選手はボートレースの信頼を失墜させたとして、4か月間の出場停止処分を受けました。
しかし、現在ではこのような不祥事を表立って語る者もおらず、その黒歴史さえもなかったかのようなスターぶりで競艇界の広告塔とも言える立場にいます。
そのような立場に立てる理由は、“異常とも言える勝負強さ”でしょう。
その“勝負強さ”を証明するように、2023年10月24日からボートレース蒲郡で開催された 「SG・第70回 ボートレースダービー」では、不祥事による出場停止処分後初のSG復帰戦で6回目のSG優勝を果たすとともに、通算100回目の優勝かつ史上27人目の24場制覇をSGの大舞台で同時に達成する快挙を成し遂げています。
そして恐るべきは、峰 竜太選手が活躍することによって競艇界の売上金額も増加の一途を辿っていることです。
峰 竜太選手が6度目のSG制覇を果たした2023年のボートレースダービーの売上金額は、6日間で180億9258万8300円。
2022年までは2年連続でマイナスに転じていた収益を、この大会で一気に前年度比+53.2%まで回復させたうえに、前年の売上額に63億円近く上乗せして、ダービー史上過去最高額の売上を記録したのです。
このような活躍の結果、峰 竜太選手は復帰後に飛び級でA1級へ返り咲いたのは言うまでもなく、さらには「史上最強のB1級選手」として話題となり、それ以降は以前と変わらず活躍を続けることで、名声を手にし続けています。
このようにスター性と人気、そして実力を兼ね備えた峰 竜太選手はまさに“ボートレース界の至宝”とも言える存在でしょう。
そのため、峰 竜太選手ほどの一流選手が予想屋との金銭のやりとりをしていたとしても、本人の理解不足を理由に4か月の出場停止処分で幕引きをした裏には“日本モーターボート競走会の忖度”が見え隠れしているように感じてしまうのです。
【2024年2月】現役選手による舟券の購入
2024年2月、20代の現役ボートレーサーが過去に舟券を購入していたという不祥事が発覚しています。
その選手の名前は「佐々木 海成」元選手。
2024年2月27日のモーターボート競走会の発表によると、131期の元ボートレーサー・佐々木 海成選手が、現役だった期間において電話投票で舟券の購入を行っていたという事実を確認したと発表したのです。
競艇に関して規定する「モーターボート競走法」では、競技の透明性を保つためなどから職員や選手が舟券を購入することを禁止しています。
モーターボート競走法とは?
ここで抵触している“モーターボート競走法”とはどのような法律なのでしょうか?
モーターボート競走法は、国土交通省などが所管し、公営ギャンブルの一つである競艇(ボートレース)の開催や競技施設の仕様、舟券の販売などについて定めた法律です。
公平・公正の理を守るため、ボートレースを楽しむ人たちに不信感を与えることがないように制定されました。
モーターボート競走法11条2号とは?
モーターボート競走法11条では日本モーターボート競走会の職員や選手、レースに関係する政府職員・自治体職員らの舟券購入を禁じています。
法令の条文には次のように記されています。
(舟券の購入等の禁止)
第11条 次の各号のいずれかに該当する者は、当該各号に掲げる競走について、舟券を購入し、又は譲り受けてはならない。
一 競走に関係する政府職員及び施行者の職員にあつては、すべての競走
二 競走実施機関の役職員及び競走の選手にあつては、すべての競走
三 前二号に掲げる者を除き、入場料の徴収、舟券の発売等、競走場内の整理及び警備その他競走の事務に従事する者にあつては、当該競走
引用元:モーターボート競走法|条文|法令リード (hourei.net)
日本モーターボート競走会が下した処分
上記の事実を受けて、日本モーターボート競走会は『舟券の購入は「モーターボート競走法第11条第2号」の選手の禁止行為に該当する』という理由において、2024年2月19日付けで選手登録を抹消(=強制引退)しています。
元ボートレーサー・佐々木 海成とは?
名前 (フリガナ) | 佐々木 海成 (ササキ カイセイ) |
登録番号 | 5260 |
生年月日 | 1997年11月27日 |
身長 | 162cm |
体重 | 56㎏ |
血液型 | B型 |
支部 | 大阪 |
出身地 | 大阪府 |
登録期 | 131期 |
級別 | B2級 |
デビュー日 | 2022年11月18日 |
最終出走日 | 2024年2月8日 |
引退日 | 2024年2月19日 ※登録抹消日 |
佐々木 海成元選手は大阪支部所属の131期ボートレーサーでした。
2022年11月18日~23日に地元・住之江競艇場で開催された「一般・サンケイスポーツ旗争奪 第65回GSS競走」初日の第1レースでデビュー。
デビューから1年2か月後の2024年1月18日~21日にの三国競艇場で開催された「一般・大寒三国決戦」3日目の第7レースで初勝利を飾りました。
通算2勝で優出・優勝歴はなく、生涯獲得賞金は662万2000円。
実兄は同じ大阪支部所属・123期の佐々木 大河選手(5054)、師匠は97期の田中 和也選手(4357)でした。
このたび、「登録第5260号佐々木 海成(ささき かいせい)」元選手が、選手であった期間において、電話投票で舟券の購入を行っていた事実を確認いたしました。
同選手の行為は、モーターボート競走法第11条第2号の選手の禁止行為に該当しておりますが、同選手は2月19日付けにて登録を消除しております。
今後、これまで以上に競走の公正安全の確保に努め、再発防止を徹底してまいりたいと存じます。
令和6年2月27日
一般財団法人 日本モーターボート競走会引用元:「登録第5260号佐々木海成」元選手の競走法違反(舟券の購入)について | BOAT RACE オフィシャルウェブサイト
事実を隠蔽していて、登録抹消後に公表って…
これこそが『THE 隠蔽体質』って揶揄される所以なんだろうね…
まるで「引退したからこれで終わり!」みたいなかんじ…
【2024年5月】江戸川競艇場職員の舟券購入
ボートレース界で多発する不祥事はこれだけでは終わりません。
現役選手の舟券購入という不祥事の3か月後、今度は「一般財団法人・日本モーターボート競走会」の元江戸川支部職員が在職中に舟券を購入して書類送検されたことが報じられました。
2024年5月に書類送検されることとなった江戸川競艇場勤務していた男性職員は、最低額(1口100円)での小口購入を繰り返しており、利益はほとんどなかったが、2年間で約2万口(=230万円分)を購入したとのことです。
前述のとおり、競艇に関して規定する「モーターボート競走法」では、競技の透明性を保つためなどから職員や選手が舟券を購入することを禁止しています。
送検容疑は、在職中の2023年5月1日と8月27日の2日間にわたる男性の行動。
いずれの日も江戸川競艇場での業務中にスマートフォンアプリを使ったインターネット投票で、総額1,400円分の舟券を購入したとされており、本人もこれを認めています。
警視庁小松川署の調べに対して男性は、「職員が購入してはいけないと知っていたが、ナマで毎日、選手の状況が見られ、当たるとうれしくてやめられなかった。」などと供述をしたということで、その後の報道とモーターボート競走会からの発表が注目されていました。
「わかっちゃいるけどやめられない…」江戸川競艇勤務の職員が舟券購入か、書類送検へ 不祥事続きの競艇界に国交省が指導
「わかっちゃいるけどやめられない…」江戸川競艇勤務の職員が舟券購入か、書類送検へ 不祥事続きの競艇界に国交省が指導
2024年5月15日 06時00分
ボートレース江戸川(江戸川競艇場、東京都江戸川区東小松川3)に勤務していた同区の男性(64)が在職中に舟券を買ったとして、警視庁が男性をモーターボート競走法違反(舟券購入の禁止)の疑いで近く書類送検することが、捜査関係者への取材で分かった。最低額(1口100円)での小口購入を繰り返すなどし、利益はほとんどなかったが、2年間で約2万口230万円分を買ったという。
同庁小松川署によると、男性は競艇を実施する一般財団法人「日本モーターボート競走会」(東京)の江戸川支部職員。競艇に関して規定する同法では、競技の透明性を保つためなどから職員や選手が舟券を購入することを禁止している。
送検容疑では、2023年5月1日と8月27日、いずれも同競艇場での業務中にスマートフォンアプリを使ったインターネット投票で、総額1400円分の舟券を買ったとされる。同署の調べに「職員が購入してはいけないと知っていたが、ナマで毎日、選手の状況が見られ、当たるとうれしくてやめられなかった」などと供述している。
関係者によると、男性は選手が落水・転覆した際に救助する「救助艇」に乗るレスキュー員で、選手の近くにいる立場だった。違反が発覚したことから競走会の聞き取りを受け、同年10月ごろに依願退職したという。競走会は14日、本紙の取材に「捜査に支障をきたすため、回答は差し控えます」とした。
引用元:「わかっちゃいるけどやめられない…」江戸川競艇勤務の職員が舟券購入か、書類送検へ 不祥事続きの競艇界に国交省が指導:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
被疑者男性の業務内容と現在
被疑者は、“当時、ボートレース江戸川に勤務していた江戸川区在住の64歳男性”。
業務内容は、選手が落水・転覆した際に救助する“救助艇”に乗るレスキュー員で、選手の近くにいる立場でした。
違反が発覚したことから、男性はモーターボート競走会からの聞き取りを受けて、2023年10月ごろに依願退職したといいます。
報道を受けたモーターボート競走会の回答
元職員による“舟券の購入禁止違反”という不祥事を受けて、モーターボート競走会は記事が出る前日、この記事および東京新聞からの取材を受けて、『捜査に支障をきたすため、回答は差し控えます』と回答していました。
発表された声明の内容
2024年5月15日に元職員の違法な舟券購入の一報が報じられてから1か月後の2024年6月4日。
ついに日本モーターボート競走会が「当会江戸川支部元特別嘱託の競走法違反(舟券の購入)について」という公式声明を発表しました。
発表された声明の内容を原文のままご紹介します。
当会江戸川支部元特別嘱託の競走法違反(舟券の購入)について
本年5月、当会江戸川支部の元特別嘱託が、在職期間中に禁止されている舟券を購入していたことから、モーターボート競走法違反(同法第11条2号の舟券の購入禁止)により、警視庁小松川警察署から書類送検されております。
競走実施機関である当会は、自らの監督不行き届きにより、事業の根幹となる法令に対する違反行為があったことをお知らせするとともに、本件を厳粛に受け止め、これまで以上に役職員に対するコンプライアンス教育を徹底いたします。
今後は、管理体制の強化を図るなど、再発防止に努めてまいります。
なお、元特別嘱託は、昨年10月に依願退職しておりますが、当時の職場における監督上の責任については、昨日、当会の規則に基づき、譴責処分を行っております。
引用元:日本モーターボート競走会文書
要するに…
『書類送検日前に依願退職をした元特別嘱託が、在職期間中にモーターボート競走法で禁止されている舟券を購入していたことから書類送検されました。
当会としては監督不行き届きを重く受け止めて、役職員に対するコンプライアンス教育を徹底し、再発しないように努めます。
そして当時の監督者の責任については、注意・警告を行って始末書を提出させて戒めました。(これでこの件については一区切りとさせていただきます。)』という内容です。
全ての不祥事対する声明に共通するのですが、文章としては完璧。
だけど、何のエビデンスもなく、“どこがどのように改善したのか”が全くわからない・伝わらない声明だと感じました。
国土交通省による指導
競艇を巡る不祥事は相次いでおり、4月下旬に所管官庁である国土交通省はモーターボート競走会に対して、不祥事について速やかに報告するように指導しています。
その一方で、競艇の人気は高まっている昨今。
ボートレースにおける2023年度の売上額は、4年連続の2兆円超えとなる2兆4200億円で、若者などへのPR活動の奏功もあってか、年々売り上げが右肩上がりとなっている状況です。
しかし、本件についてモーターボート競走会は、2023年秋ごろまでに当時の職員による「モーターボート競走法違反(舟券購入の禁止)」を把握していたにもかかわらず、2024年4月中旬に国土交通省に報告するまで真実を隠蔽。
このことで、報告までの約半年間の長期間にわたって問題を隠し続けていたという問題も浮き彫りになったのです。
職員による違反のみならず、ボートレースを実施する法人の管理体制についても疑問視され、厳しい目も向けられることとなっている現状に対し、国土交通省海事局総務課の担当者は『報告の遅れも含めて大変遺憾。競技の公平性、透明性を保つためにも、関係者には今後ともコンプライアンス(法令順守)を徹底してほしい』としています。
【2024年7月】内部調査で複数支部の職員22名が舟券を購入
江戸川競艇場の元職員が書類送検されたと報じられてからさらに2か月後。
今度は立て続けの発覚なうえ、日本モーターボート競走会にとって危機的な不祥事が発覚します。
前述の元職員による舟券購入の不祥事を受けて、ボートレースを所管する国土交通省が内部調査をするように指導すると、一般財団法人・日本モーターボート競走会は5月下旬に本部や各地の競艇場などの全職員約750人を対象に過去3年間のインターネット・電話投票での舟券の購入履歴の有無を確認。
この内部調査によって、計22人の職員(準職員1人、嘱託職員など21人)に違法な舟券購入歴があったことが判明しました。
購入金額は多くが総額数十万円程度だったが、発覚した職員の中には数千万円に上るケースもあり、内部調査によって“法令順守の意識が欠けた職員の実態”が浮き彫りになってしまったのです。
違法な舟券購入…1人で数千万円の職員も モーターボート競走会が内部調査 発覚22人全員を解雇
違法な舟券購入…1人で数千万円の職員も モーターボート競走会が内部調査 発覚22人全員を解雇
2024年7月24日 06時00分
ボートレース江戸川(江戸川競艇場)に勤務していた男性が法律で禁止された舟券の購入を繰り返していた不祥事を受け、競艇事業を統括する一般財団法人「日本モーターボート競走会」(東京)が全国の関連施設で内部調査を行ったところ、計22人の職員に違法な舟券購入歴があったことが分かった。購入総額が数千万円に上るケースもあり、競走会は23日、22人全員を諭旨解雇処分とした。
◆調査は全職員約750人を対象 ネット・電話での購入履歴を確認
競艇事業の運営について定める「モーターボート競走法」は、競技の公正・透明性を保つためなどの理由から、職員や選手の舟券購入を禁止している。法令順守の意識が欠けた職員の実態が浮き彫りとなり、事業のイメージダウンにつながる懸念もある。
ボートレース江戸川では在職中に舟券を買った競走会江戸川支部の元男性職員が、警視庁小松川署に同法違反(舟券購入)容疑で5月15日に書類送検された。
これを受け、ボートレースを所管する国土交通省が調査を指導。競走会は5月下旬、本部や各地の競艇場などの全職員約750人を対象に過去3年間のインターネット・電話投票での舟券の購入履歴の有無を確認し、準職員1人、嘱託職員など21人に違反が見つかった。
購入金額は多くが総額数十万円程度だったが、最大では数千万円のケースもあった。競走会は懲戒規定に基づき諭旨解雇とした。今後、同法違反があった職場を管轄する警察に相談する方針という。
◆競走会「再発防止に万全を尽くし、公正の確保に努める」
競走会の広報担当は「一連の事態が相次いだことを重く受け止め、深くおわびする。競走実施機関として再発防止に万全を尽くし、公正の確保に努める」とコメント。今年2月、20代の選手が過去に舟券を購入していたことが発覚し選手登録を抹消されていたが、全選手に対する今後の調査の実施の有無は「回答を差し控える」としている。
国交省海事局総務課は本紙の取材に「競走会の複数の職員が法違反をしたことは大変遺憾。引き続きコンプライアンスの徹底を求めていく」としている。
◆不正がささやかれがちな公営競技
公営競技に詳しい北海学園大経済学部の古林英一教授の話 ボートレースを含む公営競技はとかく不正がささやかれがちだ。一職員の舟券購入だけなら八百長レースにはならないが、競技の公正性を少しでも疑われるような行為は不適切。ファンの信頼を失わないためにも、関係者には意識改革の徹底を求めたい。
引用元:違法な舟券購入…1人で数千万円の職員も モーターボート競走会が内部調査 発覚22人全員を解雇:東京新聞 TOKYO Web
発覚した22人の身分と現在
内部調査によって違法な舟券の購入歴が発覚したのは、準職員1人・嘱託職員など21人の合計22人。
業務内容はについては公表されていませんが、ある程度は選手の近くにいる立場の人間だったに違いありません。
違反が発覚したことから、22人の職員は日本モーターボート競走会からの聞き取りを受けて、2024年7月23日に諭旨解雇処分とするとともに、モーターボート競走法違反があった職場を管轄する警察に相談する方針でいるとのことでした。
報道を受けたモーターボート競走会の回答
22人もの元職員による“舟券の購入禁止違反”という不祥事を受けて、日本モーターボート競走会は東京新聞からの取材を受けて、『一連の事態が相次いだことを重く受け止め、深くおわびする。競走実施機関として再発防止に万全を尽くし、公正の確保に努める』と回答しています。
そして、今回は全職員への内部調査を行いましたが、肝心の全選手に対する今後の調査の実施については『回答を差し控える』とし、その実態はいまだに闇の中です。
不祥事に対する国土交通省の意見と指導
元職員22人が過去3年間にインターネット・電話投票での舟券の購入履歴があったという不祥事を受けて、ボートレースを所管する国土交通省はどのような反応を示したのでしょうか。
国交省海事局総務課は東京新聞の取材に『競走会の複数の職員が法違反をしたことは大変遺憾。引き続きコンプライアンスの徹底を求めていく』と回答しています。
また、このように大人数の不祥事が発覚したことで、さらにモラルの低下とコンプライアンス(法令順守)の欠如が露呈されてしまった結果、日本モーターボート競走会はボートレースファンのみならず、国土交通省だけでなく全国民からさらに厳しい目で見られることになってしまったのです。
その後、国土交通省は不祥事を起こした日本モーターボート競走会への対応を「組織的ではない」との理由で、法令順守を求める文書の指導にとどめたことで、幸いこの時には「全レース停止」の処分を下されることはありませんでした。
しかし、次に同様の不祥事もしくは八百長事件などが発覚した場合には、今度こそ「全レース停止」は避けられないかもしれません。
【2020年】競艇界最大の汚点・八百長事件
2020年1月には元競艇選手の八百長事件が発覚しています。
八百長をしていた当時は現役のA級選手で、SG競争でも活躍をしていた有力選手だったため、ボートレース界に衝撃が走りました。
その内容というのが、“犯行当時、現役で活躍していた選手が知人と連絡を取り合い、わざと着順を下げて、知人に的中させた見返りに報酬を受け取っていた”として、名古屋地検特捜部に逮捕され、その後実刑判決を受けたという事件です。
その選手の名前は「西川 昌希」元選手。
- 【競艇ニュース#1】ついに判明した引退理由!西川昌希容疑者が八百長(詐欺)容疑で逮捕!西川容疑者のプロフィール&改めて逮捕の原因
元ボートレーサー・西川昌希とは?
名前 (フリガナ) | 西川 昌希 (ニシカワ マサキ) |
登録番号 | 4559 |
生年月日 | 1990年2月26日 |
身長 | 166cm |
体重 | 52㎏ |
血液型 | B型 |
支部 | 三重 |
出身地 | 三重県 |
登録期 | 104期 |
級別 | A1級 |
デビュー日 | 2009年5月1日 |
最終出走日 | 2019年9月21日 |
引退日 | 2019年9月30日 ※登録抹消日 |
突然の引退と逮捕、八百長発覚
西川 昌希元選手は2019年9月30日付けで突然引退をしています。
当時、西川 昌希元選手の引退理由は腰痛による体調不良など、健康面の問題が引退の原因であると推察されていました。
しかし、実際のところ西川 昌希元選手はこの時すでに日本モーターボート競走会に“自身が八百長に加担した事実”を伝えたうえで「責任を取るため引退したい」と主張していたのです。
ヤクザの息子として育てられた少年時代…一流の競艇選手だったオレが八百長に手を染めた理由
『競艇と暴力団「八百長レーサー」の告白』より #1
2019年9月、逮捕される3ヵ月前のことだが、俺はモーターボート競走会に「自首」した。
これは裁判でも語ったことだが、俺は自ら外部の人間にレースの情報を流し、その人間が不正に利益を得ていたこと、さらにはその人間が国税の査察を受けた事実を告げ、責任を取る形で選手を引退したいという意向を伝えた。だがそのとき、俺は「一身上の都合」という引退理由を書かされ、その後、競走会は俺が逮捕されるまで不正に関与していたという内容を公表することはなかった。
それを隠蔽と言わずして何というのだろう。2020年7月の公判で俺が「自首」したことを証言すると、競走会は「そういった事実は一切なく、事実無根であり、法的措置も検討している」とまで言い切った。
俺が言っていることは、罪を軽くするための方便にすぎないというわけだ。
大前提として、俺が起こした事件のおかげで、競走会や関係者に迷惑をかけたことは深く反省している。
ただ、事実を覆い隠すのはやめるべきだ。競走会が、いまのような隠蔽体質を改めない限り、今後とも不正がなくなることはないだろう。
引用元:(5ページ目)ヤクザの息子として育てられた少年時代…一流の競艇選手だったオレが八百長に手を染めた理由 | 文春オンライン (bunshun.jp)
しかし、日本モーターボート競走会は「現役選手が八百長に加担したという事実」の世間への公表を避けるという隠蔽行為をしており、翌2020年1月8日に西川 昌希元選手と親族の男が名古屋地方検察庁特別捜査部に逮捕されるに至りました。
“八百長”が行われたのは、2019年7月2日にびわこ競艇場で開催された「G3・第6回 イースタンヤング」第7レース。
西川 昌希元選手は故意に減速して順位を操作する八百長行為をして、同じく逮捕された親族の男から見返りとして現金300万円を受け取ったといいます。
この一連の行為が「モーターボート競走法第72条(競走に関して賄賂を遣り取りする行為及び競走における不正行為の禁止、競走で全力を尽くす義務)」に違反したもので、逮捕後に起訴されています。
さらにその後、11の競艇場・18のレースでも故意に順位操作を行い、見返りとして総額3,425万円を受け取ったとして、名古屋地検特捜部に再逮捕・追起訴。
2020年3月19日には名古屋地方裁判所にて初公判を行い、起訴内容を認めました。
2020年10月21日に下された名古屋地裁の判決は、西川 昌希元選手に懲役3年・追徴金3,725万円(求刑懲役4年・追徴金3,725万円)の実刑判決を言い渡したとともに、共犯者である親族の男には懲役3年・執行猶予5年・罰金1,100万円(求刑懲役3年・罰金1,100万円))。
判決前は「執行猶予が付くだろう」といった見解もありましたが、実際に下されたのは実刑判決。
裁判官は『短期間で不正に得た払戻金が1億円と多額。競艇の公正や社会的信用を著しく侵害し、ギャンブルなどの浪費するための犯行で動機は身勝手』という見解を述べています。
その後、西川 昌希元選手は三重刑務所に収監され、2023年3月に仮釈放が認められると、満期日(6月2日)を待たずに出所。
2023年3月からはX(旧Twitter)のアカウントを開設し、現在はSNSやYouTubeで競艇に関する情報を発信しており、モーターボート競走法に抵触したため、全国24競艇場に出入り禁止となりながらも、様々な企画で視聴者を楽しませています。
西川 昌希元選手は、八百長に至った動機について『カネだけが目的だったのかと言えば、そうではない気もする』とし、“自分の思い描いた八百長の構図をレースで演じ切る”ことに強い達成感を抱いていたそうです。
その一方で、“全盛期の1年間の賞金額に相当する2,500万円以上の金額を数回の八百長行為で稼げるうえに、税金が取られない”こともやはり八百長を行った理由の一つであり、『いったん不正の旨味を知った俺は、甘い誘惑から逃れられなくなった』ことを、2022年11月の文春オンラインの記事『競艇と暴力団「八百長レーサー」の告白』で綴りました。
また、同記事内では八百長という違法行為に至った経緯として、2015年5月に津競艇場で開催された「一般・スポーツニッポンパール賞競走」で2度のフライングを犯し、90日間の斡旋停止を受けたことでモチベーションが低下していたところに、共犯者の親族の男との些細な会話から興味本位で実行に至ったとも語っています。
18レースで3千万円贈収賄容疑 元競艇選手ら再逮捕
18レースで3千万円贈収賄容疑 元競艇選手ら再逮捕
競艇選手が不正な順位操作の見返りに賄賂を受け取ったとされる贈収賄事件で、名古屋地検特捜部は28日、新たに18レースで不正が行われ、計3425万円の賄賂の受け渡しがあったとして、元競艇選手の西川昌希容疑者(29)をモーターボート競走法違反(競走の公正を害する行為、収賄)の疑いで、親族の増川遵容疑者(53)=津市=を同法違反(同、贈賄)容疑で再逮捕し、発表した。
発表によると、2人は共謀して、2019年1月22日~9月21日、全国10競走場で行われた18レースで不正な順位操作を計画。レースの直前に西川容疑者が2、3着になるか、4着以下になるかを決めて実行した疑い。増川容疑者は3連勝単式舟券を的中。計3425万円の賄賂を現金と振り込みで西川容疑者に渡した疑いがある。
6艇が1周600メートルを3周するボートレースは、インコースが有利とされる。逮捕容疑となった18レース中10レースは、西川容疑者が内側の1号艇で出走し、増川容疑者購入の舟券のオッズ(賭けの倍率)を高配当にしたとみられる。最もオッズが高かったのは、19年3月のボートレース三国(福井県)の第12レースで396・5倍。西川容疑者は1号艇で出走し、3着だった。
また名古屋地検特捜部は28日、19年7月2日、琵琶湖モーターボート競走場(大津市)であった二つのレースで、不正に順位を落とし、計300万円の賄賂をやりとりしたとして、両容疑者を同法違反の罪で起訴し、発表した。関係者によると、増川容疑者は数百万円で複数の舟券を購入し、1千万円以上の利益があったという。
西川容疑者は09年に日本モーターボート競走会に登録。日本モーターボート選手会三重支部に所属し、優勝は12回。19年9月に引退した。再逮捕を受け、同競走会は28日、「事件の全容が一刻も早く解明されるよう、引き続き全面的に捜査に協力する。再発防止に全力で取り組んで参りたい」とコメントした。
引用元:18レースで3千万円贈収賄容疑 元競艇選手ら再逮捕:朝日新聞デジタル (asahi.co
西川 昌希さんのXとYouTube
2023年3月に仮釈放が認められると、満期日(6月2日)を待たずに出所した西川 昌希さんですが、最近ではSNSやYouTubeの世界で注目されています。
元ボートレーサーとあって、競艇に関する専門的な情報や“ヤバめ”な投稿・動画もありますが、かなり興味深い内容となっています。
その証拠にフォロワー数・チャンネル登録者数も短期間で激増している状態です。
もはや、何も失うものがなくなった西川昌希さん。
その存在はモーターボート競走会のみならずボートレース界全体の脅威といっても過言ではありません。
興味のある方は、ぜひ一度覗いてみてください。
・X(旧Twitter)
・YouTube
- 【禁断のテーマに触れる】公営ギャンブルの闇を西川昌希が語る
- 【西川昌希への質問】競艇業界のあれこれやちょこっと裏話
西川 昌希元選手に対するボートレース競走会からの“かん口令”
2024年2月26日、日本モーターボート競走会が「モーターボート業界に対する誹謗中傷の対応について」という秘密文書を作成していたことが、後に発覚しています。
この秘密文章流出の発端は、有名インフルエンサー「Z李」氏のX(旧Twitter)投稿でした。
流出した秘密文書の内容を原文のままご紹介します。
令和6年2月26日 会員各位
公益社団法人 日本モーターボート選手会
専務理事 鈴木茂正モーターボート業界に対する誹謗中傷の対応について
昨今、SNS(Instagram、Facebook、X、LINE、YouTube、TikTok 等)が世の中に広く普及し、SNSを活用した情報発信が話題となり、中には、モーターボート業界に対する誹謗中傷も散見され、選手からの直接リークがあったなどと事実をねじ曲げて唱え、真実のように発信されているものもあります。
会員の皆様におかれましては、過去にモーターボート競走法違反を犯した西川昌希元選手及びその者と繋がりのある人物との関係が明らかになった場合、業界批判や業界内部の情報を漏洩した場合は、本会において退会勧告含む厳正な処分、さらには同僚、業界に著しく損失を与えた場合は損害賠償を請求するなどの処置を検討していきます。
本会は皆さまの安全な競争体制の確保ならびに共済制度の確立に尽力しておりますが、モーターボートレーサーの名誉を守ることも重要な施策です。皆様の名誉を守るため、今後も対応してまいりますが、プロ選手に対する一般社会等の見方も非常に厳しく、日常の生活においても高い道徳観念が求められていることを今一度ご理解いただくとともに、反社会的勢力はもとより、競争の公正に疑念を抱かせるような人物との私的交際等は絶対にしないようお願いいたします。
引用元:
この文書の内容を裏付けるような動画を西川 昌希選手のYouTubeチャンネルで発見しましたので、是非ご覧ください。
- 【西川昌希の故郷】地元津競艇場上陸のハズが、、、
- 【八方塞がり!?】びわこ競艇場での出来事全てお話しします
不祥事が相次ぐ背景
ボートレーサーを育成する養成所では、1年間の厳しい訓練が課されるとともに、教官からは公営競技者としてあるべき振る舞いを繰り返し説かれるそうです。
ですが、現役選手には自らを戒め続ける難しさがあるとされるため、その理由をあげてみました。
- 養成所では『今までの生活では駄目だ』と言われるが、慣れてくると緩くなってしまい、公人という意識が薄れる
- レースで勝って、賞金を稼ぐほどチヤホヤされて接触してくる人間も増える
このような急激な変化こそが「意識を高く保ち続けるのが難しい面=不祥事に繋がる心の緩み」に繋がってしまうのでしょう。
相次ぐ不祥事を受けた日本モーターボート競走会の見解
日本モーターボート競走会は、度重なる不祥事によって多くの人々に不信感を与えることをどのように考えているのでしょうか。
東京新聞Webの取材者が不祥事に対する見解を尋ねると『公正に関する諸規程の決定的な理解不足、給付金の趣旨、目的の理解不足、モラルの欠如が原因』と答えたといいます。
そのうえで『ネットリテラシー教育に取り組み、再発防止を図る。他の団体等との情報交換、情報共有を図り、危機管理の徹底に努める』としました。
しかし、これだけ頻繁に不祥事が取り沙汰されている現状を鑑みるに、選手個人だけの問題ではないように感じるのです。
競技を運営し、選手を育成・管理する立場にあるモーターボート競走会こそが先陣を切って、解決に向けた革新的な取り組みに着手しない限り、隠蔽体質が改善することは難しいため、風通しの良い運営体制が求められます。
日本モーターボート競走会の組織運営体制に疑問符も…
ボートレースでこうした不祥事が起きるたびに、日本モーターボート競走会は『競技の公正、健全な運営をおびやかす』『再発防止に全力で取り組む』などとしてきました。
しかし、組織運営の健全さに首をかしげたくなる事象も起きていることから、その一例をご紹介します。
労働組合の加入を巡る不適切なやり取り
2022年3月7日にモーターボート競走会は、東京都労働委員会から『労働組合の運営に不当に介入し、団体交渉に誠実に応じなかった』として、是正するよう命令を受けています。
命令書によると、モーターボート競走会は“新入職員が労働組合に加入するのを躊躇させるため、加入の意思を確認するなどした”ことと“組合が賃上げを求めた団体交渉で、具体的な数字や資料を示さなかった”という事実を突きつけているのです。
この問題について、労働組合の代理人弁護士は『明らかな不当労働行為。健全な労使関係を築くために命令を尊重してほしい』と話しました。
しかし、モーターボート競走会は命令を“不服”として中央労働委員会に再審査を申し立てました。
東京新聞Webの取材に対して、モーターボート競走会は『会(モーターボート競走会)の主張が認められず承服しかねる。本件について(中央労働委員会の)最終確定を待って対応する』としています。
レスキュー員雇用「安全面にもっと経費を」
さらに、前述したほかにも、レース中に事故が起きた際に選手を救助するレスキュー員の雇用形態が問題視されたことも。
2023年、モーターボート競走会・福岡支部が業務を外部委託していた一部レスキュー員の契約を派遣契約に見直すよう、福岡労働局から指導を受けた事案があります。
これは、外部委託契約では委託先から直接指揮命令できないことで、レスキュー員とモーターボート競走会の審判らの作業区分が不明確とされたためです。
この事案に対し、モーターボート競走会は東京新聞Webの取材に『指導に基づき、派遣契約への変更を現在進めている。安全面については講習会を定期的に実施するなど、万全を期している』と回答しました。
関係者は『そもそも派遣ではなく、正式雇用にするべきだ。ここ数年、事故や重傷事故が相次いでいる。今は選手のOBらに頼っているが、高齢化が進み技術ある人が少なくなれば、選手の安全を担保できなくなる。現場からは、こうした安全面にもっと経費を割くべきだ』と憤るとともに、レスキュー員の労働環境と競艇選手の安全面の改善を求める声があがっています。
今夏、ボートレース宮島の小松氏が選手に医療体制に満足しているかをアンケートしたところ、回答のあった約400人のうち9割近くの選手が医務室の医師に不安があると回答。その理由に年齢や専門性などを挙げた。
— 今日が終わりの始まりの日 (@__blind_side) November 4, 2024
ボートレースの現場から医療体制の不安と改善求める声:東京新聞 https://t.co/1cc1DSmh62
生死が「運の良し悪し」次第? 「水上の格闘技」ボートレースの現場から医療体制の不安と改善求める声
生死が「運の良し悪し」次第? 「水上の格闘技」ボートレースの現場から医療体制の不安と改善求める声
2024年11月4日 12時00分
選手の安全が確保されないまま、レースが開催されている。近年、不祥事が相次ぐボートレースで、レース場に勤務する医師から救急救命体制を問題視する声が上がっている。ボートレース宮島(広島県)の小松弘尚医師(65)は「高齢で救急救命ができない医師が多数勤務している。現状は選手への人権侵害だ」と訴え、監督官庁の国土交通省に早急な改善を求めている。(宮畑譲)
◆過去の死亡事故32件中、5件が溺死 救急体制は
小松氏が1953〜2022年1月までに起きたボートレースの死亡事故32件の死因を調べたところ、脳挫傷や頸部(けいぶ)損傷のほかに、少なくとも5件が溺死だった。小松氏は「レース場には、転覆した選手を引き上げるレスキュー員もいる。標準的な技術を持った医師であれば、目の前で溺れた人を助けられないなんてことはあり得ない」と憤る。ボートレースでは、実施規則などで、レース開催時には、医務室に医師が常駐することを定めている。「水上の格闘技」とも言われるボートレースでは、転覆事故が頻繁に起きる。水の事故は救命措置が早く的確なほど、溺死や後遺症を防ぐことができる。
ボートレース宮島では、8月に一時、選手が心肺停止に陥る事故が起きた。この事故では、心臓マッサージや人工呼吸などが適切に行われたため、選手の命に別条はなく、間もなくレースにも復帰した。小松氏は「水の事故は事故直後の数分で生死や後遺症の有無が決まる。文字どおり1分1秒を争う。きちんと救命措置ができれば、後遺症も残らなくて済む」と話す。
一方で、小松氏は全てのレース場で救急救命措置が適切に行える医師が常に配置されていないと考えている。「高齢などが理由で、救急車を呼ぶまで実質的に何もできない、スキルが足りていない医師が少なからずいる。医師免許がレース開催のためのエクスキューズになっている」
◆9割近くの選手が「医務室の医師に不安ある」
安全面への不安は多くの選手も感じているようだ。今夏、小松氏が選手に医療体制に満足しているかをアンケートしたところ、回答のあった約400人のうち9割近くの選手が「医務室の医師に不安がある」と回答。その理由に年齢や専門性などを挙げた。
小松氏は「選手も安全面、特に救急救命体制に不安を抱えながらレースに臨んでいることが分かる。『運良く助かったね』なんておかしな話。命を懸ける職場なんてあってはならない。そんな職場を放置する組織のガバナンスは問題だ」と指摘する。
現状を改善するために、小松氏はレース場に勤務する医師の救急救命措置のスキルの確認と訓練、医師の入れ替えを早急に行うべきだと強調する。その上で、地域の救命救急センターとの連携、医師の待遇改善なども同時に改善が必要だという。
「事故が起きるか分からない中で医師は1日拘束される。レース中はそれなりの緊張にさらされる。今よりも報酬を引き上げなくては、緊急時に対応できる医師は確保できない」
◆収益は右肩上がり「選手の安全対策にもっと予算を」
医師の待遇改善などを行うには経費がかかるが、ボートレースの収益は増え続けている。
昨年度、過去最高となる2兆4220億円を売り上げ、11年連続の増加となった。近年はコロナ禍の巣ごもり需要もあり、インターネット投票が公営ギャンブル全体で増えているが、中でもボートレースは増加率が高い。
ボートレース宮島を運営する企業団は本年度、地元自治体に計36億円の配分金を還元した。35億円を超えるのは31年ぶりという。
小松氏は「これだけ収益が上がっていて、選手の募集には高収入をうたっている。しかし、安全対策にお金が十分回っているとは言えない。安全を放置したまま、もうかればいいというものではない」と言い、選手の安全対策にもっと予算を充てるべきだと訴える。
◆競走会と国交省「適切な方、問題ない」
医師への手当を引き上げるだけでなく、地域の医師会、大学病院、拠点病院と調整する専門のコーディネーター役も必要だと小松氏は考えている。「医師会や大学の医局が積極的に医師をレース場に派遣することはない。国が事情に通じた人をコーディネーター役に任命すれば、事態を動かすことができる」以前から、医師の待遇改善をはじめ、コーディネーター役の設置を国交省に訴えているが、具体的な動きはない。「人命軽視と言われてもやむをえない。これまでの溺死が訴訟になっていないのが不思議だ。現状を放置したまま、今後、溺死事故が起きて訴訟になった場合、実施側や国は厳しい立場に立たされる」
小松氏が訴えている内容について、「こちら特報部」が競艇事業を統括する日本モーターボート競走会と国交省に見解を尋ねた。
競走会は「全ての医師は医師免許取得者であり、救急救命措置の対応力について問題ないものと認識している」と答えた。
国交省は「医師が言っていることの重要性は認識している」としつつ、「高齢だから駄目ということはない。適切な方だと理解している。安全全般については、施行者、競走会で検討するものと認識している」と回答した。
小松弘尚(こまつ・ひろなお)
1985年、広島大医学部卒。医学博士。同大で臨床教授も務めた。専門は消化器内科。現在はボートレース宮島や地元クリニックに勤務する傍ら、歯科医院の理事長を務める。
◇
◆一時心肺停止から復帰の選手「運が悪かった、では済まない話」
事故時の救急救命体制には、実際に事故に遭った選手からも不安の声が上がっている。8月27日、ボートレース宮島で、転覆事故に遭い、一時意識不明の重体となった、原田篤志選手(45)に話を聞いた。レースでコーナーを回る際、後続艇と衝突、後頭部に衝撃を受け、意識を失った。うつぶせに浮かんだため、水を飲んで溺れ心肺停止に陥った。「『何秒か対応が遅かったら、元気に話せていない』と医師に言われた」。事故時の記憶こそ曖昧だが、幸い後遺障害はほとんどなく、1週間たたずに退院。事故から約1カ月後には、レースにも復帰した。
「今回は迅速に対応してもらえ無事だったが、運が悪かった、では済まない話だ」。こう話す原田選手は、以前から救急救命体制には不安だったという。「他のレース場で、かなり高齢の医師がゆっくりと歩くのを見たことがある。心肺蘇生には相当力が必要だと聞く。そんな医師で大丈夫なのかと。他の選手も同じように感じていると思う」
重大な事故には至らなくとも、ボートレースで接触、転覆事故は日常茶飯事。「今回、処置してくれた医師は体格のよい方だった。別のレース場だったらと思うとぞっとする。(医師や医療体制次第で)運悪く命を落とすなんて考えられない。事故に遭った自分だから言えることもあると思う」。原田選手は今後、選手会を通じて、安全面の改善を訴えていくという。
◆デスクメモ
競艇漫画「モンキーターン」の主人公は落水事故で大けがをしたが、運良く名医の治療を受け、選手生命をつなぎとめた。現実の医療体制も運次第だとすれば、選手たちの不安はいかほどか。競走会と国交省は、現場の声に向き合い、さらなる安全対策の向上に尽力してほしい。(岸)引用元:生死が「運の良し悪し」次第? 「水上の格闘技」ボートレースの現場から医療体制の不安と改善求める声:東京新聞 TOKYO Web
求められる施策
国民全体が苦しんでいたコロナ禍においても、ボートレースが売り上げを伸ばし続けた状況については『合法な娯楽としての価値が大衆に認められた』と解釈して良いでしょう。
ボートレース業界は依存症対策として、レース場からのATM撤去やネット投票の制限に取り組んでいますが、売り上げが上がるほどにギャンブル依存症の人が増える可能性が大にしてあるのが現状です。
まずは、そういった「負の側面に歯止めをかける必要性」に目を向けなければならないことを忘れてはなりません。
次に、特に良い成績を残しているトップレーサーについては、その話題性や金銭を目的に近寄ろうと考える人間も一定数いることが安易に予想できます。
なんといっても、平均約1,800万円とも言われる競艇選手の高額な獲得賞金(=年収)は一般常識からはかけ離れた額だと言わざるを得ません。
公正な競走を維持するために外部との接触が制限されている競艇選手の精神面、そして不正に手を染めずに済むようなきめ細やかなサポート体制の構築が望まれます。
そして、日本モーターボート競走会の組織運営については、有識者いわく『競走会には、公営ギャンブルを特権的に運営しているという意識が感じられない。不祥事が続くのは、組織の倫理観が低下しているから。国交省も信頼性が担保されるまで厳しく指導する必要がある。本気度が感じられない』と指摘されるなど、厳しい目で見ている関係者も多く存在します。
今後も「全レース停止」とならないように、日本モーターボート競走会には『国土交通省とファンに対して説明できる目に見える施策を講じることを期待したい』ところであり、今後の動向に注目すべきでしょう。
まとめ
公営ギャンブルであるボートレースには公平・公正が求められるうえ、それが大前提のだからこそ、多くの観客が楽しめる競技だということは言うまでもありません。
CMの放映や現役選手による募金やボランティア活動などによる社会貢献活動などで健全性をPRしてきたからこそ、売り上げを伸ばし続けているボートレース業界。
競艇を普及させるため、人気を獲得するために尽力してきた選手や応援するファンの気持ちを考え、その心持に感謝する意識があれば、不正を疑われるような行動はとれなかったことでしょう。
きれいごとを言っているのは重々承知ですが…
ボートーレーサーの一人一人がしっかりと公人である自覚と自分の言動に責任を持つこと、ボートレースに関わる施設の運営・レースに関わる全ての人々が個々の利益を求めるのでなく、「人々に楽しみを与えている」という自覚・自負を持つことができれば、少しは今の不祥事が相次いでいる状況が良い方向へと進みはじめるような気がします。
年間2兆円を超える売上額を誇る巨大業界の屋台骨を支える仕事を担っている、そういう仕事に携わっているというプライドをボートレーサーだけでなく、関係者が持てるようになれば素敵ですよね。
公営ギャンブルというあまりにお金に近い職業であるからこそ、甘い勧誘や誘惑が向こうから近寄ってくることも事実。
組織の健全運営が求められる一方で、組織の問題も指摘されている昨今。
ボートレースを楽しみ、応援する多くのファンのために願うことはみな同じはずです。
日本モーターボート競走会の健全な運営体制と、選手をはじめとする関係者によるモラルの向上とコンプライアンス(法令順守)の遵守。
「全レース停止」という最悪の結果にたどり着く前に、多くの問題に対する改善が少しでも認められることを願ってやみません。
逃げ場がない正念場に立たされたからこそ、不退転の覚悟で業界の再生に取り組んでもらいたいと心から思っています。
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